5月 8 2009
『ラス・メニーナス(侍女たち)』――人間型ゲシュタルトの起源、その7
さて、今までの話からこの『ラス・メニーナス』上において表象化されている観察の視線について再度まとめておこう。
1、身体空間における第一の視線(4次元空間……前と後)
王と画家の視線の関係として表象されている空間の方向性。これは視覚が世界を身体の「前」で捉えるという意味において、身体における前-後方向に築かれている次元でもある。ここには互いの知覚(見る)経験と鏡像(見られる)経験がキアスムをもって構成されており、この方向性だけでは意識は空間の中に明確な奥行き感覚を感じ取ることはできない。
2、身体空間における第二の視線(5次元空間……右と左)
王と画家,互いの視線に対して直交してくる窓からの光として表象されている空間の方向性。左右から差し込んでくるこの光が室内で乱反射を繰り返すことによって部屋全体は明るみのもとに照らし出される。「前」を明るみの世界、「後」を暗がりの世界だとすれば、部屋の中に居合わせているすべての人物たちの〈前-後〉が前後となり得るのはこの明るみが存在しているからである。王は室内にいるすべての人物たちの「前」が集合しているところに自らの視線を遷移させていくことによって、事物の全体性を明るみに引き出し、事物の3次元性を象っていく。この明るみの起源は王にとってはあくまでも左右方向にあり、自らの主観は常にその光が作り出している乱反射の一部でしかない。
3、身体空間における第三の視線(6次元空間……上と下)
「階段の男」の視線として表象されている空間の方向性。この男は窓からの光が充満している室内そのものを他の人物たちとは違った立場から俯瞰できる視座を持っている。この視座は光(客観)を我がものとした理性の象徴と考えていいだろう。彼は王を室内にいる他の人物たちの中の一人としてしか見ていないが、しかし、この男の存在を見ることができているのはただ王のみである。主観(王)はここに超越者を自らの内部に取り入れる事に成功し、超越論的主観性を手に入れる。これが近代自我が持っている統覚の仕組みである。しかし、この統覚は同時に、王自身を多の中の一として一般化する代償として得られるものであることを忘れてはいけない。人間型ゲシュタルトを解体させるためには、われわれは自らの意識を稼動させている無意識を「階段の男」よりもさらに上位に存在する何者かの位置へと進ませなければならない。そうすれば、「階段の男」の登場によって世界から神が駆逐されたように、われわれはコギト=人間を世界から追放できるのだ。7次元空間とはそうした救済者が佇む場所である——ψ13。
ざっと輪郭を辿っただけにすぎないが、以上がヌーソロジーから見た『ラス・メニーナス』のコンポジションに潜在している無意識の構図である。終わり。ちゃん、ちゃん。
何か長くなってしまったなぁ。皆には退屈だったかも。もうしわけないです。次回はここで取り上げた身体空間と宇宙空間の関係についてOCOT情報がどんなことを言ってるか少しだけ紹介してみようかな。。へへ。ぶっ飛んでるよ。予習のため昔のブログにも目を通しておいてね。
Naoko
2009年5月9日 @ 23:59
こんばんわ!
ぜんぜん退屈じゃなかったですよ。
むしろ、以前からコウセンさんが仰っていたことが
どんどん明快になっていくシリーズでした!
『中和が先手か』『等化が先手か』の意味が分かってきた
といいますか・・・
生命現象のすべての起源は「前・後」の四次元にあり、
そこで鏡像を先手と取るか、現象世界を先手を取るかで
その後のすべてが様相を変えるんだなあ、と感じました。
現象世界が先手となると、1・2・3次元の世界は
観察者が登場した後になって表れてくる副次的な世界に
過ぎなく思えてきます。
私たちが「生命なき物質」と思っているすべてのものも、
実は生命現象の一部に思えてきます。
そしてその起源である四次元世界も、それが前後の世界
だと認識するには、次の五次元「左右」が必要不可欠で…
なるほど、「5」こそ真の「1」と、
コウセンさんが仰っていたことが深く理解できました。
出張帰りの寝ぼけた頭でばーっと「ラス・メニーナス」を
読み返していたら、すっかり目が覚めてしまいました~
とってもとっても面白かったです☆☆☆
kohsen
2009年5月11日 @ 13:46
naokoさん、どうもありがとう。
こういう反応があると、やっぱり嬉しいですね。
>現象世界が先手となると、1・2・3次元の世界は
観察者が登場した後になって表れてくる副次的な世界に
過ぎなく思えてきます。
まさに、このことを感じ取ってもらうために、このシリーズを書いたようなものです。Naokoさん、よくぞ言ってくれた。
——空間に3次元の方向付けを可能としているのは身体があるからだと思います。現在の人間の意識はそれが反転して、モノの3次元性を逆に身体側に重ね合わせてしまって空間をイメージしていますよね。その錯覚を取り去る作業がトランスフォーマー型ゲシュタルト作成の目的になります。これはOCOTのいう人間の意識からヒトの意識へと移動するための一つの方法論になってきます。