差異と反復………10

 複素平面における実軸と虚軸が作る4方向にそれぞれ3次元球面モドキをかませたわけだが、このことの具体的な意味を説明していこう。
 まずは虚軸に自他それぞれの外面としての3次元空間をかました意味だが、理由は極めて単純なものだ。知覚が生まれている奥行き方向は「見えない(虚)」からである。これは虚軸の数学的定義とも実はぴったりと合っている。

 今、左右方向に数直線を想定してみよう。数直線全体に「-1」を掛けると、左右のプラスマイナスの符号が反転することが分かる。これは数直線を180度回転させたということに他ならない。ここで「-1」を「i×i」と考えてみよう。すると必然的に数直線にiを掛けるという操作は、90度の回転になることが分かる。「i」を二度掛ければ当然、180度となって「-1」を掛けた状態と同じになる。これらのことを目の前でイメージしてみればいいのだ。90度回転して「虚(見えない)」となるような直線は奥行き方向しかないことはすぐに分かる。知覚が介入してくる方向を虚軸の方向と考えるのがいかに心理的に自然か皆にも感じ取れるのではないだろうか(下図参照)。

Real_axis_rot

まぁ、ここではそういった理由から、「わたし」がモノの周囲を回ったときにできるモノの背景方向にある奥行きが作る3次元空間が常に「モノの背景方向」になる、という意味で一本の虚軸(- i )に代表させているわけだ。これは自己が一つの対象をその周囲全体から認識しているときの背景空間の全体の意味を持つことになる。この空間は次元観察子で言えばψ3であり、無限遠としてのψ3の位置そのものは僕らがマイナスの点電荷と呼んでいるもののことである。一方の(+ i )側の虚軸は、自己から見た他者にとってのモノの背景空間への方向となる(こちらはプラスの電荷の本質)。

 自分の意識の働きの中を探してみれば分かると思うが、僕らは他者が見ている空間を想像する能力を持っているはずだ。例えば、モノを挟んで他者と対峙し合ったとき、他者に何が見えているのかおおよそイメージできるだろう。それは、おそらく、「わたし」が見ているモノの裏側と「わたし」の顔と、「わたし」の背後の風景である。今度はその状況のまま、モノを中心に自他ともに180度の対峙関係で回ってみるといい。そのとき他者側の知覚に形作られているモノの背景としての3次元空間がψ*3の意味となる。僕らがこうした空間の有様をイメージできる(他者側の知覚が実際に見えるということではない)ということは、意識構造にはそのカタチが存在しているということでもある。早い話、わたしに見える3次元、あなたに見える3次元空間、そして、また、わたしに見える3次元空間………というように、ここでも意識が空間構造として反復しているのである。ヌース理論ではこの意識の往来を電場の+と−の間の振動の本質的意味と見なす。この反復は複素平面で言えばsin振動(縦軸振動)に当たるものである。ここでの差異は何かと言えば、それはおそらく2つの対峙する客体位置の反復ということになるのだろう。これは3次元空間そのものでもあるのだが、それについても説明しておこう。

 客体空間としての内面の反復の方の描像は簡単だと思う。単に、通常の3次元空間のイメージを作り、それが縮んできて、0点で交差し、反転して無限遠まで膨張し、また、そこで反転して、0*点にまで縮んできて………というようなイメージを作ればいい。それが3次元の振動であるということは容易に分かるはずだ。こちらの振動が実軸上の振動(cos振動)に対応している。ただ、問題は、何度も言ってるように、等化を先手に持った意識側にはこの中和側の振動は見えるが、中和側を先手に持ったものには見えない、という点である。人間の顕在意識は中和側だから見えない。ψ4においてはψ1(モノの外部)とψ2(モノの内部)の差異が見えなかったことを思い出そう。これは、モノの内部に空間が同一化させられているということでもあった。この結果、内面側では、ψ4とψ*4も同一化してしまうことになる。つまり、2つの主体からは客体空間側は同一の3次元空間に見えてしまうということだ。より正確に言うと、ψ4-ψ*4は無限小と無限大での2つの空間の連結(これによってS^3を作る)が見えず、単なるR^3としてしか見ることができないということである。このことは、僕らの認識に即して言えば、主体は自他として2つあるのに、客体は1つにしか見えない、ということを意味している。一つのパイを巡る自他における所有闘争の萌芽がすでにここで生まれているわけだ。そう言えば、OCOTはこう言ってたっけ。

 磁場とは人間です(シリウスファイル)

 このことは実は物理現象上にも明確に現れている。それは電場にプラスマイナスの電荷があるのに対し、磁場にはNやSといった磁荷(モノポール)が存在しないということだ。だから、ヌース理論は次のように予言する。
 人間の空間認識に反転認識が生まれればモノポールが発見される。もしくは、モノポールが発見されたときは、人間の空間認識に反転認識が生まれたものと解釈できる。

 ヌース的文脈で言えば、モノポールの出現は「進化への顕在化の対化」が生み出された、ということを意味するわけだ。これは、いつも言っている宇宙卵の卵割のことである。このNOOSの発振による反転の顕在化は人間が所持しているモノ概念を木っ端みじんに解体していくことになるだろう(ヌースでは「形質の崩壊」といいます)。いよいよ、脱-表象化の空間領域(モノのイメージが一切存在しない世界)へと人間の意識が上昇を開始するということだ。ヌースの頑張りも多少は関係するだろうが、いずれにしろ、それはあと10年もかからないのではないかと思っている。2013年にくればまさにビンゴ!!なのだが。。おっと、話が横道にそれている。悪いクセだ。話を電磁場の構造に戻そう。。。つづく。