消えた「前」を探せ!! 3

E_timespace_1 消失した「前」の世界の話を続けよう。ここではその幾何学的構造についてメモ代わりに書いておく。

「前」はどこへ消えたのか?………肉体の周囲に生まれた「後」の回転により生じている時空概念を消し去ると、「前」にはむき出しのリアルが顔を出す。このリアルにおいては自分が客体的な「点」であるなどといった認識は全くない。ヘッドレスだ。それはあるがまま、見えるがままのものである。あるがまま見えるがままの「前」。その「前」を回転させてみよう。「前」がグルグルと回転すれば、それはそのまま天球面を形成するのが分かる(半分は地面になっているはずだがこのことの意味はいずれ触れる)。この天球面はリアルの中に立ち現れている何らかの対象(0点)から見れば∞となっている。つまり、「後」の回転によって生まれていた空間の広がりとは、元来は∞だった主体の位置が他者の眼差しによって0*点に落とし込まれていたことによって生まれていたものであったと考えるといい。そして、0*点として落とされていた偽りの主体の周囲に∞ではなく∞*へと広がる空間が想像的なものとして概念化されていた。そういうストーリーである。

 さて、リアルの中に現れたこの0点と∞点だが、回転のさせ方によっては全く区別がつかなくなることが分かる。空間上にある一点を想定し、その点を中心にその点が絶えず見えるように回ってみるのだ。それは0点そのものを中心に天球面を回転させることと同意だ。そのとき、0点と0点の背後方向にあると思われる無限方向はピタッと重なり合って一点で同一視されてしまう。だから当然、天球面上の点は、回転によってこの0点とすべて一致してしまうことが予想される。これはどういうことか。つまり、前においては0点と∞点は等化されているのである。何度も言うように、このリアル認識が形作られているところは時空上ではない。それは敢えていうならば、時空上の一点と見なされるわたしの位置0*点の中に張り付いた余分な次元である。この次元を物理学にならって内部空間と呼んでみたい。この内部空間の形は0点を他者の目においた場合、次のような経路を辿りながら、3次元球面を形成する(上図参照)。

 0点としての他者の目→その周囲に広がって行く3次元空間(球面)→そして天球面としての∞点。ここは他者にとっては0*点と見えている位置である。0*点としての主体の目→他者から見えるその周囲に広がって行く3次元空間(球面)→そして天球面としての∞*点。これはわたしから見た0点である。これらの過程で、3次元球面が作られる。

 さて、以上のような構造を次元を一つ落として図にすると左上に挙げたような図になる。後ろの回転によって広がっている空間は時空=ミンコフスキー空間なので超双曲面として表される。原点は0*点だ。しかし、前の空間ではその0*点は∞点に置き換わり、そこから他者の0点へと進み、そこで他者の見る∞*点へと変わり、同じく他者の見る0*点へと変わる。しかし、そこで再び∞点に接続し………。といった具合に3次元球面がくっつくことになる。

 そして、重要なことはこの3次元球面は時空上においては点の内部構造のようなものとして見えてしまうということだ。なぜなら、さっき説明したように、この空間は点の中でほとんど同一視されてしまう世界だからである。察しのいい方はこの3次元球面の回転が電子のアップスピンとダウンスピンを決定づけている空間であることに気づかれているかもしれない。点の中に貼付けられたこの自転する三次元球面こそ双子の電子なのである。

 さて、最初の問いに戻ろう。「前」はどこに消えたのか?………答えは一つしかない。「電子となっている」である。そして、そこは死後の世界へのゲートなのだ。