嗚呼!九州国立博物館

top01 4日間の東京出張を終え、今日は太宰府に新しくできた九州国立博物館へ。いや、何ともデカイ建物だ。案内パンフを見ると、屋根部分は約160m×約80mもあるらしく、それが両端部の支持点と、中央の位置に設けられた2ケ所の支柱だけで支えられている。高さはゆうに10階建てのビルぐらいに相当するだろうか。空間容積は35万立方メートルもあるらしい。
この巨大な宝物殿の設計はご当地(久留米)出身の建築家、菊竹清訓氏によるものだそうだが、外観のデザインが何ともハンパな感じがしないでもない。。。写真でも分かるように、側面の外壁は今流行の全面ダブルスキンのガラスウォール。実は内壁側は竹籠のようにして編み上げられたバンブーで全面が覆い尽くされている。古代九州を象徴する太宰府ということで、プリミティブな感覚を表現したかったのだろうが、これは見事にはずしている。わたしには籐製品の化物にしか見えなかった。バンブーを内壁にあしらったせいで、建物内部からは、ガラスウォールの良さが何も伝わってこない。何とむちゃくちゃ暗いのだ。屋根は完全に遮光されていて、まあ、早い話、竹網で内壁を覆った成田空港のビルを思い出してもらえばよい。どうせこの手の空港ビルを真似るなら、ド・ゴール空港並みにもっとアバンギャルドにとんがって欲しかった。未来的なものと古代的なものを接合させようとして、完全にしくじった、という模範例である。

 建物同様、展示物も今ひとつパッとしない。特に常設展示室の方は最悪だった。「美の国 日本」と銘打って様々な時代の工芸品や美術品が展示されているのだけれども、何の脈絡もなくただダラダラとこジャレたショーケースにディスプレイされているだけなのだ。外国の大博物館ならばほとんど十両クラスの扱いしか受けないような品が、ここでは横綱クラスとしてどうどうと展示されている。これじゃデパートの催し物と大した違いはない。ああ、これも九州の為せる業か。

 帰りの車の中でつくづく思ったことだが、日本の文化遺産は、こうした巨大な建築物の中で展示して見せるようなスタイルは似合わない。博物館とは所詮、強国による戦利品の見せびらかしのための場所なのだ。諸外国を征服した際に持ち帰った宝物や略奪品が所狭しと飾り立てられてこそ一流の博物館としての風格が出る。だから、国内の細々とした美術工芸品が並べられても何ともピンとこない。こうした「大きいことはいいことだ」風の発想はそろそろ止めよう。仏像はお寺で見る方がよっぽど存在感はあるし、飾り屏風も質素な武家屋敷に置かれてこそ異彩を放つ。巨額の税金を投入して、こんな施設を作るくらいなら、いっそのこと太宰府にあったと言われる都府楼をアジア文化の交流の場の象徴として正確に復元させた方がよっぽど文化的な作業になったのではないかと思う。はっきり言って、この博物館は先行きが危うい。一体これから先何を展示しようというのか。。