いいSF映画がない。

p300199ilands934SF映画に目がないわたしは、常時、新作のSFものをサーチしているが、今月初め、公開と同時に観に行った「宇宙戦争」があまりに期待ハズレだったので、今回は、最初から期待薄の「アイランド」に、それこそ全く何の期待もせずに機械的に足を運んだ。

 監督はマイケル・ベイ。映画好きの人であれば、あの「アルマゲドン」や「ザ・ロック」の監督さんと言えばおなじみだろう。ベタベタのハリウッドアクションものを撮らせたら、右に出る者はいない、いや、誰も出たくないのかもしれないが、とにかく、ビルや車がぶっ壊れるCGを多用したド派手なアクションものを十八番とするB級大作ものの監督さんである。「アルマゲトン」にしろ「ザ・ロック」にしろ、理屈抜きで見れば楽しめるのだが、ベタベタなCGアクションに加えて、ブルース・ウィリスとか、ニコラス・ケイジとか、これまた脂質たっぷりの男優さんがセットでくっついてくると、かなりコレステロール度が高くなり、ついつい日本茶は出ないのかぁ!と叫びたくなってしまうものだ。

 しかし、今回のこの「アイランド」、主役がどんな危ない目にあっても絶対に死なないという不自然さは相変わらずだが、ベイ監督作品としてはかなりいい出来のように思えた。まず役者の選出がなかなかグーだったのではないか。共演のユアン・マクレガー、スカーレット・ヨハンセン。この主役コンビのアッサリ度がドラマの展開に軽快さとスピード感を与えていたし、その他の脇役陣もなかなか渋かった。

 ストーリーの内容は近未来のクローンビジネスを題材にしたものだが、印象としては「マトリックス」や「トータル・リコール」「ブレード・ランナー」を掛け合わせて立方根を取ったような内容である。自分をクローン人間と知らず育った主人公が、あるとき事実に気づき、仲間のクローンたちを幻想の牢獄から救済する。いわゆる自由への逃走ものだ。テーマ自体への深い掘り下げはなかったが、美術や小道具などへの配慮が行き届いていて、舞台としてのトータル感は結構あった。ただ、これはどうひいき目に見てもSF映画とは呼びにくい。やっぱり、ベイ監督お得意のド派手なアクション映画である。アクションものが好きな御仁は映画館に足を運んでも損はないと思う。無理な相談なのかもしれないが、個人的には、ジョージ・ルーカスの劇場デビュー作である「THX1138」やマイケル・ラドフォードが撮った「1984」のような、硬質な雰囲気をもう少し入れて欲しかった。ラストは結構、カタルシスがあるかもね。。