1月 15 2019
【シュタイナー思想とヌーソロジー】ピックアップ解説 1
今回からシュタイナー思想とヌーソロジー本の解説を6回にわたって行っていきます。
■シュタイナーが言う霊視力とは、幽霊やお化けを見るというような曖昧なものではありません。シュタイナーが言う霊視力とは、この物質世界の背後にある高次世界を直接知覚する能力のことです。―p.42
一般的には、「霊」という言葉は地縛霊とか守護霊とか心霊スポットとか言うように、極めて表象的にイメージされている。シュタイナーのいう霊とはドイツ語でいうGeist(ガイスト)のことであり「精神」の意味だ。そのような世俗的な意味での「霊」としてイメージしないこと。
ヌーソロジーでは「霊」のことを基本的には「精神」と呼んでいる。それは「わたし」という存在のすべての根底にある純粋な力としか呼びようがない。哲学の言葉で、「純粋持続(ベルクソン)」や「根源的時間(ハイデガー)」と呼ぶこともある。霊として思考するに当たっては(「純粋思考」と呼び、普通の思考とは区別する)、まずは、この純粋な根源感覚に感応することが極めて重要だと思われる。
■霊視力が対象とするこのエーテル空間は、純粋な物質世界とは言えず、物質世界と高次の霊的世界との境界領域です。このエーテル空間において、物質原理と人間の意識原理の混合が始まります。―p.42
霊視力が最初に見いだすのは、シュタイナーに拠ればエーテル空間です。これをシュタイナーは物質空間(時空)に対して反転した場所と見ています。ここにヌーソロジーは反転した時空としての素粒子空間を見ます。つまり、素粒子空間とはシュタイナーのいうエーテル空間に相当するということです。
「そこでは物質原理と人間の意識原理の混合が始まる」とシュタイナーが述べるとおり、ヌーソロジーは素粒子空間を人間の無意識構造が作られている場所と見なします。
ヌーソロジーでいうトランスフォーマーが行っていく作業は、シュタイナーの言葉を借りるならば「霊視」に対応してきます。それはエーテル組織の知覚化ということになりますが、それがヌーソロジーが「次元観察子」と呼ぶもののことではないかと解釈しています。
1月 28 2019
ハイデガー、ドゥルーズ、そしてヌーソロジー
ヌーソロジーは哲学的にはハイデガー=ドゥルーズの思考線をなぞっている。ポイントとなるのはハイデガーのいうphysis(=自然)という概念だ。このphysisは僕らが慣れ親しんでいるnature(=自然)とは全く違ったものだ。natureが造られた自然なら、physisは造り出す自然、生成としての自然を意味する。
ハイデガーはこのphysisについて次のように書いている。
「physicとは発現して、自己を立て直すこと、自己の中に滞在して自己を展開することである。この支配の中に、根源的な統一から分かれ出た静止と運動とが秘められ、また開示されている。この支配は思考の中でまだ統御されないままの制圧的な現-存であって、この現-存の中で現存するものが存在者として現成するのである。だがこの支配は、それが自己を世界として戦い取るとき初めて隠蔽性から歩み出る、つまりギリシア語でいうaletheia(非隠蔽性)が生起する。世界を通して初めて存在者は存在的になる」―形而上学入門p.106
難解な言い回しだけど、これは一言で言うなら、受け取る者から与える者への転回のことを言ってる。「存在者が存在的になる」というのは、自然の由来が自己の中に見え、存在者自身の中に自己があまねく浸透して見えるような状態と考えていい。自己自身が物自体へと生まれ変わるという言い方もできる。
このような形で存在が本質現成した世界では、時間と空間の意味合いも大きく変わる。natureにおいて、時空は存在者の立ち現れの場に過ぎないが、physisにおいて、時空は存在者を現出させる開花作用のようなものへと変わる。ハイデガーはそのような時空をnatureの時空と区別して〈時-空〉と呼んだ。
この辺りは、ドゥルーズの思考線もまったく同じだ。ドゥルーズはハイデガーの存在概念にベルクソンの純粋持続を重ね合わせ、それをそのまま極微の内包空間へと接続させ、そこから、モナド化したこの内包性を〈巻き込み〉と〈繰り広げ〉という理念的ダイナミズムのもとに襞の存在論として展開した。
半ば神秘主義化しかけていたハイデガー哲学に現代科学の様々な物質的知見をアクセスさせ、新たな自然哲学、まさにphysisの命脈を保った内在性としての自然哲学へと発展させようとしたのだ。
ヌーソロジーはこのphysisに内在する根底的輪郭が素粒子構造そのものだと考えている。いつも言ってることだが、物自体の開示は物の根底(素粒子)から為される以外に道はない。物の根底が開かれることによって初めて、ハイデガーの〈時-空〉も露わになる。そのとき世界は相転移を起こすことになろう。
By kohsen • 01_ヌーソロジー • 0 • Tags: ドゥルーズ, ハイデガー, ベルクソン, モナド, 素粒子