4月 19 2005
20年ぶりの新宿2丁目
3日間の東京出張。今回は新宿のKプラザに宿を取った。新宿の街は久しぶりだ。仕事のスケジュールも今回は四件だけで余裕があったので、空き時間に新宿の散策を楽しむことにした。この街はわたしにとって人生のボトムラインを過ごしたところだ。それだけに貴重な思い出がたくさん詰まっている。新宿をアジトに活動していた26〜27才の約2年間はわたしの人生にとっては、まさに「地獄の季節」そのもの。過ごした場所は伊勢丹ウラの新宿2丁目。いわゆるオカマ街である。以前、このブログにも登場したエバシラという相棒がここに一人で自らを幽閉する生活を送っていた。わたしもその幽閉に付き合った。欲望で煮えたぎる街の中でいかにして欲望に打ち勝つか。二人ともそれだけをひたすら考え、音楽をやっていた。結果、精神状態はボロボロになり、こころは芯まで屈折しまくった。そうしたとことん破壊的な青春時代だった。今回は、ついついその当時が懐かしくなって、カメラを片手にフラフラと足を運んでみたというわけだ。あれから20年余り。新宿2丁目は何も変わってはいなかった。果たして、わたしの方は変わったのだろうか——。
〜ここから、ニューシネマパラダイスのテーマ音楽入る(笑)〜♪
エバシラと地獄の20代後半を過ごしたマンションのファサード。当時と何ら変わることはない。ただ、当時、新築だったマンションの白いタイルがこころなしか黄ばんで見える。
ルー・リードやトム・ウェイツをウォーク・マンで聴きながら、夜な夜なうろついた通称オカマ通り。ホモ専門のアダルトショップや、女性専用のトルコなどが立ちならんでいた。あと、夜になるとホモ客相手のポン引きのオバサンがうじゃうじゃ徘徊していた。しかし、昼間の2丁目はご覧のように夜の怪しさが嘘のようにかき消される。これは水商売の女性を昼間に見たときの印象と似ている。そこには極めて素朴な下町風の匂いが漂っているのだ。そう言えば、ここで暮らしていた人々もみんなとても朴訥な人たちが多かった。オカマやホモセクシュアルに偏見が無くなったのもここで彼らの地を見ることができたからだ。ストレートな連中の方の性愛の方がはるかに歪んで濁っていると感じたのは、夜、新宿2丁目から歌舞伎町へと歩いてみたときだった。歌舞伎町に近づけば近づくほど欲望の臭気が強烈になっていく。エバシラはその臭気に当たって、よく吐いた。人間の悪意が放つ臭気には本当に敏感な奴だったのだ。
目玉焼き定食がうまい定食屋。というか、目玉焼き定食はわたしたちにとって当時最大のごちそうだった。バイトで金がはいるとエバシラと二人でこの定食屋にいった。金がないときは、マンションの電磁調理器で作るキャベツで倍ぐらいに膨れ上がった日清焼きそば。もしくは、井村屋の肉まん1日3ケ。そうした食事が1週間ぐらいは平気で続く。タフだった。今なら3日と持たないだろう。
曲作りに行き詰まったときにたまに足を運んでいた末広亭。なんといっても早い時間に出演する若手落語家たちの凍り付いたような目が好きだった。全員が悲壮感にも近い緊張感を全身にみなぎらせ高座に上がっていた。客席からはほとんど笑いは起きない。しかし、彼らは話し続ける。見る方も精神をすり減らしていく。その感覚がたまらなかった。
キングスビスケット。ブルースハウスの老舗(新宿3丁目)。
新宿二丁目が別にボトムというわけではないが、わたしが人生のボトムラインをこの街で過ごしたことは偶然ではないかもしれない。ボトムなときにこそ、人間は人間を学ぶことができる。人間の冷たさも、暖かさも、自分の精神状態がボトムなときであればあるほど鋭敏に感じ取ることができるものだ。ヌース理論構築にここでの経験が役立ったのかどうかは未知数だが、一つだけ確かなことは、ここでの生活がなければわたしは狂気には陥らなかっただろうということ。真の正気は狂気を超えたところにしかやってこない。。。
4月 21 2005
Taxman
今日は税務署から上席国税調査官というコワイ肩書きの人物がやってきた。税務調査である。別にヌースコーポレーションが儲かっているからというわけではない。税理士の先生曰く、税務署の定期的な調査ということで、以前から予定されていた調査訪問である。
税務署の役人というと、わたしの世代のわたしのような人種はすぐにビートルズのtaxmanを連想するはずである。リボルバーの1曲目。ジョージの快心作。そういった理由から、今日は、朝、来るときにtaxmanを口ずさみながら、出社。「税金の仕組みをお教えしましょう。あなたの取り分が1なら私の方は19です。全額徴収されないだけでも感謝しなさい。私は税金取り、そう税金取りなのですよ〜♪」アイムアタックスマン、ア〜、ア〜イム、ア、タァ〜クスマ〜ン。と、原チャリに乗り、会社の前までやってきたものの、すでに、税務署からの客人は先に到着の模様。上着のボタンをきっちりと止めて、社に入った。
応接室にはすでに税理士の先生と税務署からの客人が今日の調査についての打ち合わせに入っていた。わたしはこういうスクェアーな人種と面と向かって対話するのがかなり苦手である。一体、税務署の役人と向かい合って何を話せというのか。しかし、とりあえず社長である。社の代表として挨拶を交わしておかなくてはならない。致し方なく、象徴界での役割に徹して名刺を差し出す。初めまして。こちらこそ、初めまして。お忙しいところ申し訳ありません。今日は宜しくお願いします。この何気ない挨拶の中からすでもう調査が始まっているのである。何もドギマギすることはない。軽くいなすのだ。。。わたしは無罪だ。
会社の景気はどうですか?
さっそく、調査官は探りを入れてくる。(どうですかって、もう下調べは済んどるだろうが。。。)
えー、ぼちぼちです。
製品は売れてますか?(売れてますか?って、そんなジャブはいいから、早く、ストレートば繰り出さんかい、はげちゃびん)
いゃー、いまひとつですね。
従業員は何名ですかね?(また、下手なフットワーク使いやがって、たぬきおやじが)
はは、5人で何とかやってますよ。
ここで、社長は退散。あとは経理の方にバトンタッチ。Taxmanは会社の帳簿の隅々までチェックを入れ、あーだこーだ、いちゃもんをつけてきたそうな。
ヌースコーポレーションは税理士の先生の指導が厳しいせいもあって、本当に健全経営である。取引先との接待すら皆無に近い状態なので、利益が出た年にはそれなりに税金もきっちりと払う。税金はきっちりと納めて、行政に正しい使い方をしてもらう。それが当社のポリシーである。だから、何一つ後ろめたいことはない。だが、妙に落ち着かない。Taxmanの訪問とはそういうものだ。Taxmanと面と向かうと、虫メガネでケツの穴を覗き込まれているようなむず痒さがある。寄生虫はいないはずなんだけど、ここに卵ついてますよぉ〜と、指摘されそうな嫌な感じが文字通り尾を引くのである。。。予定では調査は明日も続く。延長がないことを祈ろう。ちなみにこのTaxman、今日は4時40分頃からそわそわし始め、5時には影も形もなくなっていた。さすが、Taxman。
「あなたの給与の仕組みをお教えしましょう。あなたの取り分が1ならその全額はわたしが払っているのです。5時で帰れるだけでも感謝しなさい。私は納税者、そう納税者なのですよ〜♪」
ユゥアータックスマン、ユゥ〜ア〜、ア、タァ〜クスマ〜ン。へんだ。
By kohsen • 10_その他 • 0