4月 21 2005
Taxman
今日は税務署から上席国税調査官というコワイ肩書きの人物がやってきた。税務調査である。別にヌースコーポレーションが儲かっているからというわけではない。税理士の先生曰く、税務署の定期的な調査ということで、以前から予定されていた調査訪問である。
税務署の役人というと、わたしの世代のわたしのような人種はすぐにビートルズのtaxmanを連想するはずである。リボルバーの1曲目。ジョージの快心作。そういった理由から、今日は、朝、来るときにtaxmanを口ずさみながら、出社。「税金の仕組みをお教えしましょう。あなたの取り分が1なら私の方は19です。全額徴収されないだけでも感謝しなさい。私は税金取り、そう税金取りなのですよ〜♪」アイムアタックスマン、ア〜、ア〜イム、ア、タァ〜クスマ〜ン。と、原チャリに乗り、会社の前までやってきたものの、すでに、税務署からの客人は先に到着の模様。上着のボタンをきっちりと止めて、社に入った。
応接室にはすでに税理士の先生と税務署からの客人が今日の調査についての打ち合わせに入っていた。わたしはこういうスクェアーな人種と面と向かって対話するのがかなり苦手である。一体、税務署の役人と向かい合って何を話せというのか。しかし、とりあえず社長である。社の代表として挨拶を交わしておかなくてはならない。致し方なく、象徴界での役割に徹して名刺を差し出す。初めまして。こちらこそ、初めまして。お忙しいところ申し訳ありません。今日は宜しくお願いします。この何気ない挨拶の中からすでもう調査が始まっているのである。何もドギマギすることはない。軽くいなすのだ。。。わたしは無罪だ。
会社の景気はどうですか?
さっそく、調査官は探りを入れてくる。(どうですかって、もう下調べは済んどるだろうが。。。)
えー、ぼちぼちです。
製品は売れてますか?(売れてますか?って、そんなジャブはいいから、早く、ストレートば繰り出さんかい、はげちゃびん)
いゃー、いまひとつですね。
従業員は何名ですかね?(また、下手なフットワーク使いやがって、たぬきおやじが)
はは、5人で何とかやってますよ。
ここで、社長は退散。あとは経理の方にバトンタッチ。Taxmanは会社の帳簿の隅々までチェックを入れ、あーだこーだ、いちゃもんをつけてきたそうな。
ヌースコーポレーションは税理士の先生の指導が厳しいせいもあって、本当に健全経営である。取引先との接待すら皆無に近い状態なので、利益が出た年にはそれなりに税金もきっちりと払う。税金はきっちりと納めて、行政に正しい使い方をしてもらう。それが当社のポリシーである。だから、何一つ後ろめたいことはない。だが、妙に落ち着かない。Taxmanの訪問とはそういうものだ。Taxmanと面と向かうと、虫メガネでケツの穴を覗き込まれているようなむず痒さがある。寄生虫はいないはずなんだけど、ここに卵ついてますよぉ〜と、指摘されそうな嫌な感じが文字通り尾を引くのである。。。予定では調査は明日も続く。延長がないことを祈ろう。ちなみにこのTaxman、今日は4時40分頃からそわそわし始め、5時には影も形もなくなっていた。さすが、Taxman。
「あなたの給与の仕組みをお教えしましょう。あなたの取り分が1ならその全額はわたしが払っているのです。5時で帰れるだけでも感謝しなさい。私は納税者、そう納税者なのですよ〜♪」
ユゥアータックスマン、ユゥ〜ア〜、ア、タァ〜クスマ〜ン。へんだ。
4月 23 2005
コンスタンティン
キアヌ・リーブス主演の映画「コンスタンティン」を観てきた。予想していたよりもかなりいい出来だった。キアヌの演技も力が抜けててよかったし、SFXの控えめな使い方も好感が持てた。何といっても一番気に言ったのは、登場してくる天使や悪魔の描き方である。C・ウォーケン主演の「ゴッドアーミー」を彷彿とさせるスタイリッシュな天使像、悪魔像はなかなかのものだ。中でも、ティルダ・スウィントンが演じた大天使ガブリエルが実にいい。彼女の快演が普通であればB級幻魔大戦モノで終わりがちな作品の質を1ランク上げていたと言っても過言ではないだろう。彼女に免じて★★★★を上げよう
さて、この映画、スタイルだけではなくストーリー展開にも一捻り、二捻りぐらい入れてる。だから、単なるエクソシストもののように聖霊万歳、悪魔退散という簡単な構図では話が進まない。普通、ガブリエルは処女懐胎をマリアに告げにくる受胎告知の大天使として有名だが、この作品の中では、ガブリエルはルシフェルの息子マモンと密約を結び、人間界にマモンを引き入れようとする黒幕として描かれている。速い話、善VS悪という単純なイデオロギー対立の世界観はこの映画ははなから持っていないということだ。このマモンを人間界に生誕させるために必要とされるものが、映画の冒頭で登場してくるロンギヌスの槍である。ロンギヌスの槍とは、ゴルゴダでイエスが処刑されるときにその脇腹を突いた槍のことだ。この聖槍の存在はアーサー王の聖杯と並んで、ヨーロッパの代表的な秘宝伝説となっている。かのヒットラーも血眼になって、この槍を探し求めたのは有名な話だ。
まぁ、もっとも、ヌース的に見れば、これらの秘宝は単なる象徴、仮儀にすぎない。神秘学的な解釈を普通にたどれば、これら聖槍と聖杯の結合によって対立物の一致が起こり、賢者の石ヘルマフロディートスが生成されるというストーリーになるのだろうが、重要なことは、それらのシンボルが何を意味するかということである。参考までに、聖槍と聖杯をヌース理論的に解釈すると次のようになる。
・ロンギヌスの槍………男性原理………反定質の力………ロゴス
・聖杯………女性原理………反性質の力………コーラ
ヌース的に言えば、聖槍と聖杯の結合は、ロゴスのコーラへの流れ込み、もしくは、コーラによるロゴスの吸引のイメージとなる。これは宇宙的受胎の意味であり、すなわちいつもわたしが騒いでいる「ヌースの発振」のことだ。このヌースの発振はロンギヌスの槍が聖杯に突き刺さったときに起こるが(エヴァンゲリオンでは月に刺さる槍として描かれていた)、このときこの槍を杯に刺す役割をするのがガブリエルだと考えると面白い。当然、この行為には影があり、それは反ヌース的なものをこの地上に出現させる。。。
映画の話に戻ろう。ガブリエルがマリアの胎(このマリアが実は双子だったことも面白かった)に聖槍を突き刺そうとしたとき、コンスタンティンによって召還されたルシフェルがそれを阻止する。ルシフェルとはマモンのオヤジである。古き魔王ルシフェルはそれなりに古い掟を守り、人間界に勢力を延ばそうとしたバカ息子のマモンを地獄に連れ戻していく。結局、ガブリエルの悪企みは失敗し、ガブリエルは翼をもぎ取られ人間に失脚する。。。
さて、この原作者、よほどの愛煙家なのか、それとも嫌煙家なのか。喫煙がいかに体に悪いかということを、随所でメッセージしてくる。ルシファーでさえ召還できる能力者がタバコの吸い過ぎで肺ガンにやられて死ぬという設定は、なかなか風刺の効いたギャグには違いないが、宗教と科学が完全に引き裂かれ、それらの関係を再構成させることに全く興味を喪失してしまったアメリカニズムの今を感じさせた。。
By kohsen • 09_映画・テレビ • 4 • Tags: ロゴス, 神秘学