3月 22 2007
客員研究員
ヌース理論が大学でも活動の場を持つことになった。今週の月曜日に、武蔵野学院大学の客員研究員の任命を受けたのだ。あっという間の出来事だった。きっかけは、今年の1月半ば届いた一通のメールだった。差出人は武蔵野学院大学の学長であるT氏。なんでも、最近、ヌース理論の関連本3冊を読み、その思想内容に大変共感を持ったということで、今後のヌース理論の活動にいろいろと協力させて頂きたいという申し出だった。正直、嬉しかった。ヌース理論は出自が出自だけに一般的にはまだ白い目で見られがちである。大学を拠点とした活動など、まだまだ先のことだろうと思っていたからだ。
最初のメールから二週間後には、T学長は激務の時間の間を縫って福岡に来られた。食事を供にしながらヌース理論の将来の展望を大いに語り合った。T学長は大学という場を通して、世間一般に広くヌース理論を啓蒙していき、かつ、一方で、アカデミックな世界にも徐々に進攻させて行きたいとお考えのようだった。現在のヌース理論にどのくらいの力があるかは分からないが、僕はこの提案を躊躇することなく受け入れた。波がやって来たときには乗れ。万が一、溺れたときは、とことん溺れろ。それが僕のポリシーだ。
ただ、僕は難解なものを分かり易く啓蒙していくというスタイルはあまり得意ではない。同時にアカデミックな表現に関しても専門的な教育を受けたことのない僕にはどこまで表現できるか未知数ではある。だから、現時点でのヌース理論が大学という場で何をやれるのかは分からない。しかし、10年後には確実に何らかの芽が育っていることだろう。それだけは自信と確信がある。
東京都内にある学園本部で授与された客員研究員の任命書には次のような文面がしたためられていた。
——貴殿は独自の宇宙観や人間知覚の把握更に古代から現代までの先哲の思想を広く網羅した「ヌース理論」を展開しておられます。心や精神を重視する時代の中で今後益々貴殿の思想哲学を打ち立てる理論の場は広がることと推察いたします。つきましては右の職務に任命し大学という学術の場で活用を深めて頂くことをご期待申し上げます。
この場を借りて、T学長のご厚意に対して衷心よりお礼申し上げたい。
3月 25 2007
水素原子の描像
今日はちょっと難しい話。
原子の本質を理解する意味でとても重要な議論を、現在、ヌース会議室上でΦさんと交わしている。Φさんはすでにヌース理論が提供しているケイブコンパスモデルの内容をほぼ理解されている。その上で、物理数学の専門的な知識との擦り合わせを単独で進めてられているようだ。Φさんの分析は、ヌース的に見て実のところとても鋭い。僕自身、物理学の知識が全然不足しているので追いかけるのが大変だが、観察子の描像を具体的に意識に浮上させていく上で大変有用なものとなっている。そこで、今日書いたΦさんへのレスをこちらのブログにも転載することにした。
前後関係もなく、具体的な解説も端折られているので、ここだけ読むとちょっと難しいかもしれないが、ヌース理論が主張したいポイントはただ一つ。水素原子とは人間が持った概念の構造であるということだ。それも、主観、客観、モノ、観測者といった、認識の起点となるべき基礎概念の構成であるということ。こうした考え方で原子を捉えられるようになってくれば、これからの人間は、精神即物質という世界観のもと、全く違う生き物に変容していける可能性がある。——それを作れ。そうすれば彼はやってくる。。。
Φさん、とりあえず、また一つだけに絞らせて下さい。
——おそらくこの離散値の由来はSpin(1)=O(1)ではないかと思います。軌道角運動量の演算子をL、スピン角運動量の演算子をS、ディラック行列をα、空間推進(つまり、量子力学的運動量)をp(いずれも3次元ベクトル風)とすれば、ハイゼンベルグの運動方程式より、
dL/dt=+(α×p)
dS/dt=−(α×p)
が成り立ちます。私の考えでは、αは4次元の時空的捩れを表現するものであり、dL/dtは「時空の推進」、ds/dtは「時空の反推進」と考えております。dL/dt+dS/dt=d(L+S)/dt=0ですから、この2者の「相殺」により、「全角運動量」J=L+Sが保存されることになります。「角運動量」は「空間の回転」に対する保存量ですから、「全角運動量」は「時空の回転」に対する保存量と呼んだ方がいいのかもしれません。——以上、Φさんの書き込みからの抜粋。
Φさんの物理数学的知識からくる構造分析をケイブコンパスに当てはめてみました。現在、僕が持っている描像とかなり符合する点が多いようです。かなり勇気づけられます。
ROMの皆さんを意識して、分かりやすく図で説明します。
ここでは電子のスピン角運動量と軌道角運動量との関係を考察しているわけですから、当然、電子はすでに核子(この場合、もっともシンプルに陽子1ケと考えましょう)に捕捉されています。ということは、陽子を形作った対称性がまず先に存在していて、そこに、新たに電子が加わっているという構図について話をしていることになります。
陽子はご存知の通り、ケイブコンパス上ではψ7として表現されます。ψ7が持つ対称性は今のところS0(4)です(SO(3)対称性をスピノールと見れば、SO(4)はSO(3)×S^3なので、SU(2)とも解釈できるのではないかと思います)。SO(4)対称性はプラトン座標では、正六面体の4本の体心立方軸(√3エッジ)をすべて等化するような回転として現れると考えています。すると、このときの回転軸は、今度は面心立方方向の一本の軸として出現してくることが分かります(下図1)。この方向がヌースが5次元と呼んでいるものの方向です。この5次元における双方向性、言い換えれば、SO(4)群の中心としての(Z,-Z)がO(1)=Spin(1)を観察しているのではないかと考えています。ヌースでいう「表相の等化」です。
「表相の等化」は知覚正面上における前後(表裏)を、左右と見なせるような認識の視座を意識に用意してきます。分かり易く言うと、実際にはモノの表と裏に見える部分を、意識にはそれを真横から見てあたかも左右方向のように見立てている想像力が含まれているということです。この想像力を提供している位置が表相の等化の位置に当たります。事実、幾何学認識の問題として、(Z,-Z)は左右方向(もしくは上下)でしか認識の対象に成りませんよね。ケイブコンパス上ではこの位置は下図2のように表すことができます。これは陽子のアイソスピンとも言えるのではないかと考えています。
さて、ここから、陽子による電子の捕捉が始まるわけですが、この段階で捕捉される電子はψ5(自己側の知覚球面)ではなく、ψ*5(他者の知覚球面=他者を規定している空間のカタチ)の形を模索している自己側の意識のカタチになっていると思われます。つまり、客観的モノ概念(ψ7=陽子です)を挟んで、ψ5とψ*5を対化として見れる視座の獲得です。
しかし、これだけでは、電子=ψ*5のカタチは軌道角運動量を持ち得ません。つまり、陽子の周囲を回っていないということです。電子を陽子回りに周回させるためには、今度は3次元空間(S^3上)に散在している無数の他者の位置を用意する必要があるのではないかと思われます。つまり、特定の他者の知覚球面ではなく、いろいろな場所に存在する無数の他者の知覚球面を自己側がイメージできるような自由度を考えなければならないということです。意識によるこの自由度の獲得が電子の周回の意味に対応させることができるのではないでしょうか。これは別の言い方をすれば、観測対象と観測者全員が一つの同一化した空間に投げ込まれている状態の認識と同じですから、結局は客観的時空のイメージを形作るための能動力として解釈することが可能です。つまり、陽子が客観的モノ概念の形成力だとすれば、その周囲を巡る電子の公転とは客観的時空概念の形成力ではないかということです。こうして、陽子の周囲を周回する電子の幾何学的描像が、客観的時空上の客観的モノという概念と一致してくることになります。
以上のような描像から、「全角運動量が時空の回転に対する保存量である」というΦさんの意見には納得が行きます。ヌース的には「全角運動量」とは、自転角運動量と軌道角運動量を足し合わせたものですから、結局のところψ7がψ*7のカタチを模索している意識の状態に当たります。ψ*7はψ8を観察する働きを持っています。ψ8はローレンツ変換対称性です。ここでΦさんが言われる「時空の回転に対する保存量」が意味するところは、ヌース的解釈からすると、結局のところ、時空の回転に対する観察力ということになります。ここで言っている「時空の回転」がローレンツ変換であることは言うまでもありません。
●結論
水素原子とは外在世界(モノと時空)の認識を形作っている概念のカタチ。すなわち、思形。
Φさんの物理数学的分析と齟齬をきたすところがあれば、ご意見下さい。
By kohsen • 01_ヌーソロジー • 7 • Tags: ケイブコンパス, プラトン, 表相, 量子力学