3月 11 2007
レクサスの男
近くのmakiiという店に買い物に出かけた。makiiは24時間営業の店で、東京でいうならkinokuniyaのような高級スーパーだ。まぁ、スーパーほど大きくないので、高級コンビニといったところか。夜中、ヌースをやっていて腹が減ったりすると、オレはmakiiに出かけて、サンドイッチやいなり寿司などを買ってくる。もう10年以上も通っている常連客だ。
そんな常連のオレが今日はしくじってしまった。いつものように買い物を終え、車を出すときに、傍に停車していた別の客の車にぶつけてしまったのだ。ガツッ。鈍い音がして、しまったと思って車を降りてみると、オレの愛車の黒のBMWの右前方部分が、横に止めてあった白い車の左後方を大きく傷つけている。白地に黒だからよけい目立つ。うぐぐっ…やっちまった。白い車のケツの部分のロゴを見ると、、、『LEXUS』。。。よりによってレクサスかよぉ〜。。周囲を見回したが幸いなことに目撃者はいない。その間数秒だっただろうか。悪魔と天使がオレの左脳と右脳の間で何やらささやき合っていた。
——おい、逃げちまえよ。あのくらいの傷、どうってことねぇ〜ぜ。あんなデカイ車をラインを越えて停めてるヤツの方が悪いんだよ。ありゃ高級車だろ。金もかかるぜ。な、逃げちまえよ。
——どんな些細な悪も、アンタの魂を濁らせる。どんな些細な一場面もアンタの人生全体の縮図だ。ここでフケたら、アンタは人生のあらゆるヤバイ局面で逃げ癖を身につけちまうことになる。そんな、しょっぱい人生はいやだろ、なぁ、コウセンさんよ。
オレは迷わず天使のささやきの方に一票を投じた。
店に再度入ったオレは、一目散にレジへと向かい、店員にレクサスの客を探してもらった。すぐに高そうなスーツに身を包んだ紳士風の中年男性が出てきた。まさにレクサスの男然としている。
「すみません。車をぶつけてしまいました。」
「え〜っ、どこにぃ〜!!」
駐車場に案内したオレは詳しく状況を説明して、レクサスの男に平身低頭、謝った。
「しようがないよ。それにしてもあんたいい人だねぇ〜。今まで何度も当て逃げされてるけど、あんたみたいに謝ってきた人は初めてだよ。」
オレの謝り方がよほど潔かったのか、レクサスの男は被害者のはずなのになぜか妙に機嫌がいい。その笑顔を見て、なぜか加害者のオレまで気分がよくなった。
「事故証明取れば、保険で修理費は出るから、とりあえず警察を呼んだ方がいいな。」
「はい、わかりました。」
オレはすぐに携帯で警察を呼び、事故の記録を取らせ、無事、一件落着。警察が来ている間も、その中年男性と警察官とオレは終止、和やかに談笑を続け、世間話に花が咲く。
「ねぇ、おまわりさん、わたしとこの人どちらが若く見える?」
免許証の見せ合いっこをして、オレと互いに同じ年だと分かったレクサスの男は、上機嫌で若い警官に話しかける。
「こっちの人ですかね。」
一寸の躊躇もなくその警官はオレの方を指差した。自分の若々しい容貌によほど自信があったのか、レクサスの男は、急に口を閉ざした。
「僕はいつもジーンズですから。。」
そうやって、フォローしたが、レクサスの男はちょっと悲しそうな顔をして「修理の金額が分かったら、また連絡するから。」と言って、そそくさと車に乗り込んだ。オレは車が見えなくなるまで頭を下げ続けた。
傷つけた車はレクサスの中でも高級クラスだ。かすり傷でも軽く二十万ぐらいは請求が来るだろう。お金は保険で降りるが、たとえ、自腹で払わなくてはいけなかったとしても、この出来事はオレをハッピーな気分にさせてくれたに違いない。生きることにおいて最大の美徳は「正直であること」。それを再確認させられた夜だった。
※オレってこんなにイイ奴なんだぜぇ〜、という類いの話にもし聞こえたら、すみません。レクサスのお方、わたしの不注意のために時間を使わせて申し訳ありませんでした。
3月 22 2007
客員研究員
ヌース理論が大学でも活動の場を持つことになった。今週の月曜日に、武蔵野学院大学の客員研究員の任命を受けたのだ。あっという間の出来事だった。きっかけは、今年の1月半ば届いた一通のメールだった。差出人は武蔵野学院大学の学長であるT氏。なんでも、最近、ヌース理論の関連本3冊を読み、その思想内容に大変共感を持ったということで、今後のヌース理論の活動にいろいろと協力させて頂きたいという申し出だった。正直、嬉しかった。ヌース理論は出自が出自だけに一般的にはまだ白い目で見られがちである。大学を拠点とした活動など、まだまだ先のことだろうと思っていたからだ。
最初のメールから二週間後には、T学長は激務の時間の間を縫って福岡に来られた。食事を供にしながらヌース理論の将来の展望を大いに語り合った。T学長は大学という場を通して、世間一般に広くヌース理論を啓蒙していき、かつ、一方で、アカデミックな世界にも徐々に進攻させて行きたいとお考えのようだった。現在のヌース理論にどのくらいの力があるかは分からないが、僕はこの提案を躊躇することなく受け入れた。波がやって来たときには乗れ。万が一、溺れたときは、とことん溺れろ。それが僕のポリシーだ。
ただ、僕は難解なものを分かり易く啓蒙していくというスタイルはあまり得意ではない。同時にアカデミックな表現に関しても専門的な教育を受けたことのない僕にはどこまで表現できるか未知数ではある。だから、現時点でのヌース理論が大学という場で何をやれるのかは分からない。しかし、10年後には確実に何らかの芽が育っていることだろう。それだけは自信と確信がある。
東京都内にある学園本部で授与された客員研究員の任命書には次のような文面がしたためられていた。
——貴殿は独自の宇宙観や人間知覚の把握更に古代から現代までの先哲の思想を広く網羅した「ヌース理論」を展開しておられます。心や精神を重視する時代の中で今後益々貴殿の思想哲学を打ち立てる理論の場は広がることと推察いたします。つきましては右の職務に任命し大学という学術の場で活用を深めて頂くことをご期待申し上げます。
この場を借りて、T学長のご厚意に対して衷心よりお礼申し上げたい。
By kohsen • 10_その他 • 10