12月 20 2013
宇宙の種子「フォニオ」と複素空間
11月のレクチャーでは「ドゴンの宇宙哲学」のあらましを話したあとに複素空間の話をしようと思っています。ドゴンと複素空間に何の一体何の関係があるんだと訝しがる方も多いかもしれませんが、ドゴンの宇宙哲学では宇宙の創造は神アンマが作り出すフォニオと呼ばれる一つの小さな種子から始まります。
このフォニオは「宇宙で最も小さいもの」とされ、かつ同時にそれは「前の宇宙の要素をすべて含んだもの」ともされます。前の宇宙はアカシアと呼ばれるのですが、その正体は明らかではないのですね。宇宙のほんとうの始まりはドゴン神話でもナゾなのです。ただ神アンマは「フォニオによって物質をはじめた」と言われています。
フォニオは七段階の振動を作りながら自らの内部で螺旋状に成長していきます。この七段階の振動を発展させていくのは種子の生命の本質とされることばの活動です。ことばの力によって種子がその内部で成長を遂げていく。。そこからこの種子は螺旋状の旋回を方向を反転させ世界を開いていきます。
神話を未開人の子どもっぽい馬鹿げた空想の産物ととる人たちもいますが、神話は決して過ぎ去った遠い昔の話ではなく、今現在、人々のこころの内部の深い場所で起こっている力の流動の物語と言ってよいものです。その意味では人は未だ神話の中にしか生きていないし、また神話の中でしか生きられない。。
さて、こうした話がなぜ複素空間と関係するのか——ということですが、僕にはこのフォニオが現代物理学にいう光子のことのように思えてならないからです。ドゴンの神アンマは自らが作り出した前宇宙アカシアが持っていた四元素をすべてフォニオの中に入れ込みます。
フォニオはアカシアの宇宙から見れば最も小さいものですが、同時にアカシアの宇宙をすべて含んだものと言えます。光子にも似たような性質があります。皆さんもよく知っている「ホログラフィック」と呼ばれる性質です。
部分=全体、全体=部分という考え方ですね。いわゆる現代版モナドです。光子は物理学的に言えば物質の始まりであり、また世界で最も小さなものとも言えますが、同時にそれは世界全体を巻き込んでいる。そのような在り方で実際に存在しています。
ですから、この光子は大小関係がきっちりと規定される古典物理の枠組みの中では正確には記述することができません。そこに登場してくる数学的な道具立てが複素空間というものなのです。複素空間の次元というのは一つの次元単位が2次元で構成されます。
つまり、互いに直交する実数軸と虚数軸で作られる複素平面が複素1次元と呼ばれるものになります。光子はこの複素1次元の空間上でで描かれる単位円周上でグルグル回転しているものとして記述されます。ドゴンの神話ではフォニオは双子です。現代物理学でも光子は双子です。その双子性は光子が持つ角運動量(スピン)の固有値1と−1として表されています。
ということで、次回のレクチャーは前半を「ドゴンの神話」について語り、後半を「複素空間」についての解説をしながら、存在の種子であるフォニオの正体についてヌーソロジーの観点から謎解きを進めていきたいと思っています。
数学的な話はまだそんなに詳しくしないので、数学が苦手な方でも何の問題もありません。興味がある方は是非レクチャーの方に足をお運びいただければと思います。
12月 24 2013
宇宙的性愛について
物質はドゥルーズが言うように精神の襞-地層のようなものだ。そして、この地層の最も深い部分は物質の表面として現れている。精神の地層は中心核から表面に向かって積み上げられているのだ。最も高度に地層化された精神は人間の肉体であり、それゆえ人間の皮膚こそが活動する精神の最先端の現れということになる。人間の意識は新たな先端の創成に向けてこの皮膚から発生している。
だから、人間は「触れること」において始まる知覚によって旧精神との〈折衝-かけひき〉を絶えず行っていると考える必要がある。知覚は旧精神と新しく生まれでようとしている精神との間で揺れ動き、ときに権力化し、ときに反権力として振る舞おうともする。それは男の知覚と女の知覚の拮抗とも言えるし、また公的知覚と私的知覚の闘争でもある。
女の知覚には生命の苗床がセットされている。女の知覚は物質の中心部に深く入り込み、物質の胎盤を持っているのだ。それは精神を刷新するため与えられた場所とも呼んでいいもので、プラトンはそれを=コーラ(子宮)と呼んだ。幾何学の本質(プラトン立体が眠る場所である)
男の知覚はファルス(神の男根)に従属しており、それは一者に仕えたいというオイディプス的な本能を持っている。陰茎は同一性の象徴だろう。精子とは文字通り古い精神=神霊の息子たちの異名であり、多数化するロゴスの様態を表している。
一方、卵子とは女の知覚の総体である。女の知覚は物質の胎盤という意味で素粒子のシステムと区別することはできない。素粒子もまた存在の子宮と呼べるものであると思われるからだ。種子としてのロゴスはこの子宮に向けて光の作用として放たれている。その意味からすれば、人間の歴史におけるすべての言語的コミュニケーションとは男神と女神の生殖の場とも言えるものだ。光とともに無数の言語が知覚に飛び込んではくるが、言語は知覚の場そのものをいまだキャッチすることができていない。一者の呪縛からの逃走能力を持つ精子は稀である。
女の知覚が待機しているもの——それは言語と知覚の完全なる一致である。この一致が本来、概念=conception(妊娠)と呼ばれる出来事の本質である。それは見るものと見られるものの一致に起こる思考の変質にほかならない。その思考から放たれる言葉において初めて精子は受精能力を持つのである。
卵子は7つの知覚振動の波束によって胎動している。[触覚、味覚-嗅覚、視覚、聴覚][運動感覚、言語感覚][自我感覚]——この中に卵が個体化を行っていくためのすべての原-情報が詰まっている。卵割=原腸形成、内胚葉-外胚葉、中胚葉という受精卵の成長はこの3つのグループで分けられた七段階の波束に沿って進められていく。これがドゥルーズのいう個体化のシステムである。ここにおいては死と生は一致している。
星の発生と、胎児の発生は、われわれが予期せぬところで重なり合っているのである。
By kohsen • 01_ヌーソロジー, ドゥルーズ関連 • 0 • Tags: ドゥルーズ, プラトン立体, ロゴス