7月 27 2018
ハイデガーがいう「手許存在」をケイブコンパスで見る
ハイデガーがいう「手許存在」の背後にある空間構造をヌーソロジーのケイブコンパスを使って、ドゥルーズのいう「主観性の物質のアスペクト」に合わせて具体的に示してみよう。まず、手許存在は人間の調整質における感性=Ψ10の領域が送り出しているのではないかと予想できる(下図)。
主観性(感性)は自分の関心を引かないものを物から差し引く。つまり、見たい物しか見ない。これが、ドゥルーズのいう主観性の第一の物質のアスペクトというやつだ。ということで、始めよう。
今、僕の関心はテーブルの上の財布にある。妻からバースデープレゼントにもらったTAKEO KIKUCHIの革製の財布だ。使い始めて2年ほど経つから飴色に変色し、かなり渋みが出てる。今、この財布の持続空間を考えてみる。使い慣れた財布だからよく手になじむ。その質感はいつでも手のひらに蘇る(下写真)。
これがΨ1~2領域だ。Ψ1~2領域は時空でもあるが、外面側へと反転すると触覚の次元へと移ると、とりあえずは考えておくといい。触覚は尺度感覚(ユークリッド空間の感覚)と密接につながっている。
次に、この財布の視覚的イメージについて考えてみる。いつもジーンズの後ろポケットに差し込んでいるのて、裏側は黒く汚れていてあまり人には見せられない。表からは分からないが裏は汚い。それを僕の記憶は知っている。これがΨ3~4領域。
当然、この財布にはお金や各種クレジットカード、免許証などが入っている。昨年、免許証の更新を行ったとき、財布を受け付けカウンターに置き忘れて、焦って探し回った記憶が瞬時に蘇る。この財布と他の様々な事物との関係、さらにはそのときの僕の行動が作る意味のネットワーク。これがΨ5~6領域に当たる。
この財布を買ったのは街中のデパートだった。そのときに財布を丁寧に包装しながら、「お誕生日プレゼントですか?」と尋ねた中年の女性店員。そのときの僕たち夫婦のハニカミの表情と店員の微笑み―。財布を通して、他者との記憶の共有が呼び覚まされる。これがΨ7~8領域。
このように、観察子の内部には、知覚イメージ、情動イメージ、行動イメージ、他者との関係イメージというように、一つの財布をめぐって、さまざまな持続イメージの連続的な流れがある。
ハイデガーが言う道具分析における手前存在の意味を担っているのは、こうしたイメージの流れを担う内在野としての連続的多様体だ。
問題は、意識においてこうした働きを担っているのは、脳が云々ということではなく、素粒子構造(潜在的な観察子構造)そのものだということ。それがヌーソロジーの世界観の入り口となる。
素粒子が僕らの魂(無意識)の構造だというのは、そのような意味だと考えておくといい。
7月 30 2018
社会的個が作る社会ではなく、精神的個が作る精神社会へ
「つながり孤独」―クローズアップ現代。
社会的個のイメージしか持てない人たちが増えているってことだろうね。つながるべきは、ほんとうは自分。精神的個の価値について語る人たちがあまりに少なすぎる世の中だから、こういうことになる。
社会的個と精神的個という言葉の意味合いについては、こちらへ。
「女なるものへの生成変化」
孤独をネガティブなものとは見ず、ポジティブなものと見る視座が必要だね。言葉は公共性を組織化するものだけど、言葉本来のベクトルはその公共性から巣立つ方向に向いている。その方向性をつねに前のめりに模索することが大事。
自分のアイデンティティーを社会的個の中に求める時代は終わりつつある。それを精神的個の位置へと戻すこと。そして、その精神的個が形作る精神社会というものをイメージ化、言語化していくこと。社会そのものにとっても社会だけでは十分ではないと、皆んな重々承知しているのだから。
ヌーソロジーの作業もそういうものの一つだね。
By kohsen • 01_ヌーソロジー, 09_映画・テレビ • 0