8月 27 2018
量子論はハイデガーのいう「最後の神」かもしれない
真の二元論とは、知覚的な場の中の「他者構造」の効果と、その不在の効果(他者がいない場合の知覚の有り様)の間にあるとドゥルーズは言っていた。ハイデガーのいう非本来性と本来性の関係がここにある。現存在はこの両者の間で呼吸している。
「他者構造」の効果とは、ハイデガーに即して言うなら、一つは頽落。もう一つは現存在化と言える。前者は見つめられるところに拠点を置く自我。後者は見つめているところに拠点を置く主体。頽落した自我は概念と言語に縛られ、現存在の方は知覚と記憶と同居している。事物存在と道具存在の関係に同じ。
ドゥルーズの文脈では、他者の不在において初めて「存在」が開示する。これをヌーソロジーは奥行き(純粋持続)の存在論として展開しているわけだ。
他者の不在と言っても、そこには全く別の他者が出現してくることになる。もう一つの純粋持続と化した他者だ。ハイデガーの言葉で言うなら「共存在」ということになるだろうか。この共存在性は量子論ではエルミート共役(複素転置)の関係に反映されることになる。
量子論におけるオブザーバブルはすべてエルミート演算子の形式を持つ。ということは、量子論的場は本質現成としての性起の場とダイレクトに繋がっている。目の奥底にある無底の心眼を開くこと。
そこに見えてくるものは、おそらく、人間の自己を表象化していた、表象化するものたちの世界だろう。それを哲学風に超越論的なものと呼ぼうが、精神分析風に無意識(エス)と呼ぼうと自由だ。いずれにせよ、それが物質を根底で支える、終わりでもあり、始まりでもあるものの姿だ。
量子化の基本的な手続きは位置xと運動量pの正準交換関係を設定するところから始まる―[x^,p^]=x^p^-p^x^= ih~ 。 ヌーソロジーでは、この式を自他における〈幅 -奥行き〉間の差異として考える。差異 ih~はおそらく「表面」の位置だ。これは「最小精神」を意味する。
自己意識を構成する超越論的なものの構造は、この表面で受け取られる「表相」に始まって、「表相」を送り出すところに至るまでの複素空間の次元構成の中で形作られている。最終的に、この受け取りと送り出しの位置は自他の間で真逆に構成され、その交換がクォークとレプトンの対称性と関係を持つ。
自他の精神構造は、まさに無意識においても表裏一体で組織化されているということだ。その交替化の関係を表すのが大系観察子のケイブコンパス(Ω11~12)だと考えるといい。下図。
その意味で、この構造を巡る力の流動性を大本で操っているのは、 ih~ という差異ではないかという感覚がある。ヌーソロジーの思考にとって、この ih~ は、ハイデガーのいう、まさに存在開示のために到来した「最後の神」のような位置づけなのだ。量子論はいずれ人間の在り方をその根底から変えるはずだ。
8月 28 2018
ホセ・アグエイアスの「時間をはずした日」
ホセ・アグエイアスが作った「13の月の暦」に「時間をはずした日」という考え方がある。13の月の暦は28×13=364からなり、1年365日に一日足りない。この不足分の1日を時間の制約から逃れる日として、アグエイアスは聖なる日と考えた。
専門の研究家からすればオカルトの類に見えるのだろうが、この1日の意味は理性が考えるよりも遙かに深い。それは地球の自転と公転を円心関係に置き換えてみればすぐに分かる。この1日は両者を等化する回転を意味している。
天体周期は直線化した時間概念ではいかなる意味も持たせることはできないが、持続空間(存在)からすれば、精神の秩序を表現するものである。
太陽とは、ハイデガーの言葉で言うなら、隠蔽された存在の表現である。しかし、わたしたちはまだ太陽を存在者としてしか見れていない。太陽を存在の力へと性起させ、文字通り非隠蔽化させたとき、自然はフィシスへと生まれ変わる。
アグエイアスの「時間をはずした日」とは、その生まれ変わりの日を象徴するものだ。神道で言うなら、これは歳神のようなものだ。
この聖なる日において何が起こっているのか。これは自己と他者における無意識にある接触の位置と考えるといい。OCOT情報では、その位置のことを精神が精神を交差する位置と呼んでいる。この交差によって、持続空間(存在)は人間の意識に時間(存在者の位相)を送り出す。
これは、人間の原初的な時間感覚が一日における日の巡りによって起こっていることを意味している。時間の中で太陽や地球が回っているのではなく、太陽と地球あってこその時間だということ。それを推して知るべし。下図は一年と一日の円心関係を表した図。
理性に対して聖性を対抗させる時代はもうとっくの昔に終わっている。これからは、理性が生み出したものが十分に聖性に値するものであるということを語ることのできる新しい言葉を紡いでいくこと。ロゴスのヌースへの変容は、そのようして起こってくる。
By kohsen • 01_ヌーソロジー • 0 • Tags: OCOT情報, ハイデガー