6月 7 2006
1と1/4
最近、ジャンピングロープを始めた。何のことはない。縄跳びである。本を書いていると全く運動しなくなる。おまけに頭が養分を欲するようになるために、やたらと甘いものが欲しくなる。結果、ブタる。気がつくと体重が75Kgを超えていたのだ。やばい。。ヌース理論の提唱者が太ったブタになることは許されない。脂肪はヌース的には文字通り付帯質である。自らの思想的危機を身体を通して感じたわたしは、ここ数週間一日2食に減らし、会社へは原チャリではなく、徒歩で行くことにした。そしたら、あっという間に70kgにまで落ちた。へへへ………気味の悪いナルシス的笑みが自然にこぼれてくる。楽勝じゃん。。
人間、こうなると欲深くなる。栄光の20代の体重への郷愁が出てくるのだ。一時は諦めていたあのスリムな体型。GパンやTシャツが何気に決まるあの体型。あ〜懐かしの20代の体型。20代前半、モッズヘアーにPコートで決めて、自称ポール・ウェラーを気取っていた頃、わたしの体重はなんと61kgだったのだ。身長175cm、体重61kg。嗚呼、理想の体型。顔が悪いのだからせめて体型ぐらいは美しくないと。。思えば遠くにきたもんだ。75kgだったら、当時に比べなんと1/4も太くなっている。4/4が4/5へ。数で書くと大した差ではないが、図形で書くとホラこの通り一目瞭然。カッコワルすぎる。
そこで、ここは一気にあの栄光の61kg目指してトレーニングだ!!と思い立ち、亀田三兄弟に負けじと一昨日より縄跳びを始めたのである。ところがである。開始2日目に早くも惨劇が起こった。何と「縄跳び」で足が「つった」のだ。それも半端なつりではない。アキレス腱から脚の付け根の筋にかけて、左脚全体が一直線にやられてしまった。。。それも、たった23回目に。。。。おかげできようは真夜中のカウボーイよろしく、足萎えの男と化している。当然、会社に徒歩で行けない。カロリーを消費できない。。痩せられない。。ああ、61kgが遠ざかっていくではないか。。
肉体は老いる。これは致し方のないことだ。しかし、美しい老い方というのもある。最近アンチエイジングが流行っているが、肉体の見てくれを保つだけで老いを防げると思ったら大間違いである。頭を若返らせること。それはムダな知識や情報を燃やしてしまうことだ。シリウスとは忘却の星である。太った頭より太った精神になれ。でも、体はやっぱりスリムじゃないとね。
6月 25 2006
夜が起きている。。
最近、ワールドカップのTV中継を観ているせいか、どうも生活のリズムが無茶苦茶になっている。今日も午前3時に目が覚めてしまった。こんな時間に起きるのは久しぶりだ。本を書き進めているせいもあるのだろう、真夜中の目覚めというのはどうも僕を必要以上に哲学的にさせてしまうようだ。
寝静まり返った街。真夜中の静寂の中で、夜の深みが、存在することの厳粛さを無言の中に表現してくる。不思議なものだ。世界は沈黙することによって世界の赤裸々さを見せてくる。あらゆる意味がはぎ取られ、ただ世界があるという生々しい現実だけが、あたかも濃霧のようになって僕を包みこむ。言葉がかき消され、理性がマヒし、わたしという存在がかすんでいくのがわかる。夜が起きている……のだ。レヴィナスのいう「ある/イリヤ(il y a)」である。
不眠の目覚めの中で目醒めているのは夜自身である。レヴィナスはたしかそう言っていた。そこで無に宙吊りにされる〈わたし〉の思考。しかし、熟睡した後の真夜中の目覚めは不眠の目覚めのそれとは全く違う種類のもののようにも感じる。無の宙吊りという意味においてはなるほど一致している。そこでは言葉は縮退し、むき出しの「ある」のみが圧倒的な存在感で迫ってくることも確かだ。しかし、ここにはハイデガーの「不安」も、サルトルの「吐き気」も、そしてレヴィナスの「疲れ」や「倦怠」も見当たらない。不運なのか幸運なのかはわからないが、戦争という圧倒的な不条理を経験したことのない僕にとって、存在が作り出すこのホワイトアウトは、畏怖するものというよりも、信頼すべきもののようにも見えるのだ。というか、存在を信頼しないで存在の中に生きることなんてできない。もちろん、そうした楽観は、ヌース的思索のせいでもあるのだけど。。
存在とは神の寝姿である。存在は待機しているのだ。だから、僕にとっては、「ある/イリヤ(il y a)」は、ちょうど開場前の劇場のように見える。赤いビロードの絨毯。円弧状に並べられた椅子。非常出口のランプ。出し物は何かわからないが、やがてやってくる観客たちの声でこの劇場は埋め尽くされることだろう。他者の顔がレヴィナスの「顔」に変わるのはそのときだ。そうした顔は、私に呼びかけ、語りかけ、真の自由を呼び覚ましてくれるに違いない。他者とは神の別称なのだから。
By kohsen • 10_その他 • 0 • Tags: サルトル, ハイデガー, レヴィナス