8月 6 2005
iTunes Music Store
iTunes Music Store なるものが日本にもできた。
AOLとAppleが提携してできた楽曲のダウンロードサービスを行う音楽配信システムである。噂には聞いていたが、初めて利用してみると、こりぁ、凄い。凄すぎる。世界20ケ国のストアから、あらゆるジャンルの楽曲をダウンロードできるのだ。日本のストアだけでも10万曲ぐらいのストックはあるのではないか。世界中となると、おそらく数百万曲は軽く超えるだろう。おまけに、このシステムではストック曲全曲について30秒の視聴ができるときたもんだ。もちろん、すべて無料。お恥ずかしい話、昨夜はガっつきまくって大変だった。
無人島で一人ヤモメ暮らしをしていたところに、突如としてミス・ユニバース世界大会のご一行を乗せた船が漂流してきたようなものだ。あれもいいな、これもいいな。いや、あっちの方がうまそうだ。うろうろ、ドキドキ、大忙しの夜となった。昔聞いていたお気に入りのアルバム名、アーティスト名、曲名、頭に浮かんだものは、片っ端から検索して回り、味見をする。そして、特にお気に入りのナンバーは次々にゲット。さすがに日本のショップには60年代〜70年代の洋盤の数は少なかったが、UKやUSAに飛ぶと、あるわ。あるわ、Van Morrison 、The Who、CSN&Y、Doors、Captain Beefheart、Randy Newman、とっくに入手不能とあきらめていた思い出のアルバムがほとんどリストアップされている。うほ、うほ。うひゃ、うひゃ。あへ、あへ、やっていたら、あっというまに朝になってしまっていた。こんなに楽しめちゃっていいんでしょーか、神さま?
しかし、一夜明けて、冷静に考えてみると、どうもしっくりこない。この配信システムは音楽を滅ぼしにやってきた悪魔ではないかという気がしてきた。音楽もまさに最終構成に入ったということなのか。わたしのようなオヤジ世代が昔懐かしの曲を探し出して狂喜乱舞するツールとしては、このシステムは確かにもってこいだ。しかし、若い世代の連中が最新のヒットナンバーをこの配信網を通して購入するというのはどうもいただけない。ジャケットもナシ。ライナーもナシ。CDショップの雰囲気も味わえない。単なる1クリックが通帳口座から数字の150を引き算し、その引き換えとして君のもとに1曲のデータが5秒で届けられるだけ。そこには交換にまつわる物語も、歌も、詩も、絵柄も、何一つして存在しない。つまり、人間が不在なのだ。
聞き手側だけの問題ではない。作り手側にしてもいろいろと問題はある。iTunes Music Store では1曲ごとのバラ売りが基本なので、まず第一に、アルバムのコンセプト性に意味が見いだせなくなるだろうし、そうなれば、シングル・ヒット狙いのためのあざとい楽曲でマーケットの質は下落する。いや、それだけではない。すべてシングルで埋め尽くされたマーケットになれば、シングルにも意味はなくなる。A面1曲目なのかB面3曲目なのか、正体がはっきりしない可もない不可もない冗長なジャンク・ミュージックのオンパレード。文学、哲学、絵画、デザイン等、他のジャンルのアートとのつながりも片っ端から切断され、イメージの連鎖も起こらない。そういった無表情で均質な独り言の音楽が、君とマシンをつなぐ一方通行路の中で、続々と増殖し、音楽とともに君も見事、虚勢されていく——はっきり言おう。これは、巨大な懐メロマシン以外の何物でもない。「CDが発売されて10年経ったら、itune music storeの殿堂行き」といったぐらいの扱いの方がいい。若者は音楽の考古学的発掘以外には利用すべきではないな。死ぬぞ。
12月 7 2005
Mama dancing
1980年のことだから、もうあれこれ26年前のことになるだろうか。若干23歳のときにやっていたバンドのデモテープのCDがわたしのもとに送られて来た。差出人は当時の音楽仲間だ。いやぁ〜、何と懐かしい。ヌースをやり始めてからというもの過去の回想に耽ることはほとんどなかったが、このテープだけは別だ。当時を懐かしむように何度も何度もリプレイして聴いている。
全9曲入りのデモテープは当時としてはアルバム制作に匹敵する思い入れで作ったものだが、今聴いてみるとかなりショッパイ(笑)。使えるのはせいぜい3〜4曲程度。当時は日本最高のポップロックを作ろうと意気込んでいたのだが、やはり歌謡ロックの域を出ていないことを改めて痛感する。センスがイマイチなのだ。ポップロックの条件は3分30秒以内の世界でいかに楽曲の世界を広げうるかにある。4分以上の曲作りは第一戦級のミュージシャンだけに許される。当時そう信じて疑わなかったわたしは、つねにコンパクトでふくよかな曲作りを心がけていた。短い楽曲の割に構成もよく練られているし、それなりに華やいだ力強さもある。。しかし、、肝心のボーカルとメロのリズムの取り方がやっぱりダサイ(笑)。
このデモテープのあと、エピックソニーから佐野元春が「ガラスのジェネレーション」でデビュー。ガ〜ん!!わたしは潔くポップロックを諦め、ポップソウル(笑)に方向性を転換していったのだが、ソウルのボーカルはとても執れないのでソングライターとしてプロの道に進もうと考えていた。所属のレコード会社もワーナーパイオニアからキャニオンへと移った。キャニオンでレコードを出すか出さないかというときに、例の発狂事件に巻き込まれる。
26年という月日が経ってもわたしの本質は何一つ変わっていない。湧き上がる情動の中に今ひとつ弾けきれない塞ぎがちのマイナー7thの自分がいる。何事も自分の和声を根底から叩き壊さなければ一流のものは生み出せない。かなり恥ずかしいが一曲だけネット上で公開しておこう。
Mama dancing(1979)
(Music by Hironobu Handa、Words by Mitsumaro Ono &Hironobu Handa)
ビートルズの「Magical Mystery Tour」に収められている「Your mother should know」とスーパートランプの「Breakfast in America」に共通して漂うマイナー7thコード特有の哀愁を、よりタイトな8ビート感覚でダンディに表現する(したい)というコンセプトで作った曲。最後のギターソロはツェッペリンの「天国への階段」を意識したが、ちょっと長過ぎか。ちなみに、この曲、作詞は若かりし日の小野満麿氏(痴性体トーラスさん)との合作である。
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Mama dancing(音質はかなり悪いのでご了承下さい)By kohsen • 07_音楽 • 13