7月 25 2018
個数演算子を眺めながら・・・
個数演算子は場の量子論に登場する演算子のことで、簡単に言うと、波動化した場を粒子として表現する数学的手法のようなものだ。
個数演算子には粒子を生成させる演算子である生成演算子と、粒子を消滅させる演算子である消滅演算子という二種類の演算子がある。先日話したヒルベルト空間で構成される場|Ψ>にこれらの演算子を作用させることによって、粒子を作り出したり、消したりすることができる―とされている。
興味がある方はネットなどで調べてみればいいと思うが、ヌーソロジーの複素空間認識の思考で、この生成消滅演算子の本質的な意味をイメージしていくと、これはすごく単純なことを言っているのではないかと思われてくる。つまり・・・。
「意識が後ろ=a†で世界を構成してしまうと、前=aが粒子になって現れるよ」と言ってるように聞こえる。
もう少し説明してみよう。
「わたし」がグルっと周囲を見回したとき、普通それは時空の広がりとして現れるよね。これは、いつも言ってるように、他者に「見られる」ことによって生まれている空間だから、肉体的自我に囚われた我執の空間と言ってもよいものなのね。しかし、そのとき同時に、「見る」ことが起こっている奥行きそのものの空間もグルって回ってる。こちらは、昨日説明したように、ヒルベルト空間として「前」で丸まってる。このヒルベルト空間が一個の物質粒子に当たると思うといい。
要は、「後ろ」によって支配されたマクロの空間認識の中で、「前」は人知れずミクロとして沈み込んでいるというわけだ。ハイデガー風に言うなら、これは隠蔽された「存在」と言っていいものになる。流れる時間のその瞬間の隙間に本来的時間である純粋持続=永遠が入り込んでるってわけ。
物理学や哲学に不慣れな人には、やたら難しいことをこねくりまわしているように見えるかもしれないけど、ヌーソロジーはこの隠蔽のヴェールを取り去る作業(霊の顕現)を人間の理性に了解可能な形で行っていると考えてほしい。
この作業が成功すれば、すべての素粒子は消滅演算子(本来的自己の覚醒を意味する)のもとにその姿を消していくことになるんじゃないかな。
この数式からは、そうしたニオイがプンプン漂ってる。
7月 27 2018
ハイデガーがいう「手許存在」をケイブコンパスで見る
ハイデガーがいう「手許存在」の背後にある空間構造をヌーソロジーのケイブコンパスを使って、ドゥルーズのいう「主観性の物質のアスペクト」に合わせて具体的に示してみよう。まず、手許存在は人間の調整質における感性=Ψ10の領域が送り出しているのではないかと予想できる(下図)。
主観性(感性)は自分の関心を引かないものを物から差し引く。つまり、見たい物しか見ない。これが、ドゥルーズのいう主観性の第一の物質のアスペクトというやつだ。ということで、始めよう。
今、僕の関心はテーブルの上の財布にある。妻からバースデープレゼントにもらったTAKEO KIKUCHIの革製の財布だ。使い始めて2年ほど経つから飴色に変色し、かなり渋みが出てる。今、この財布の持続空間を考えてみる。使い慣れた財布だからよく手になじむ。その質感はいつでも手のひらに蘇る(下写真)。
これがΨ1~2領域だ。Ψ1~2領域は時空でもあるが、外面側へと反転すると触覚の次元へと移ると、とりあえずは考えておくといい。触覚は尺度感覚(ユークリッド空間の感覚)と密接につながっている。
次に、この財布の視覚的イメージについて考えてみる。いつもジーンズの後ろポケットに差し込んでいるのて、裏側は黒く汚れていてあまり人には見せられない。表からは分からないが裏は汚い。それを僕の記憶は知っている。これがΨ3~4領域。
当然、この財布にはお金や各種クレジットカード、免許証などが入っている。昨年、免許証の更新を行ったとき、財布を受け付けカウンターに置き忘れて、焦って探し回った記憶が瞬時に蘇る。この財布と他の様々な事物との関係、さらにはそのときの僕の行動が作る意味のネットワーク。これがΨ5~6領域に当たる。
この財布を買ったのは街中のデパートだった。そのときに財布を丁寧に包装しながら、「お誕生日プレゼントですか?」と尋ねた中年の女性店員。そのときの僕たち夫婦のハニカミの表情と店員の微笑み―。財布を通して、他者との記憶の共有が呼び覚まされる。これがΨ7~8領域。
このように、観察子の内部には、知覚イメージ、情動イメージ、行動イメージ、他者との関係イメージというように、一つの財布をめぐって、さまざまな持続イメージの連続的な流れがある。
ハイデガーが言う道具分析における手前存在の意味を担っているのは、こうしたイメージの流れを担う内在野としての連続的多様体だ。
問題は、意識においてこうした働きを担っているのは、脳が云々ということではなく、素粒子構造(潜在的な観察子構造)そのものだということ。それがヌーソロジーの世界観の入り口となる。
素粒子が僕らの魂(無意識)の構造だというのは、そのような意味だと考えておくといい。
By kohsen • 01_ヌーソロジー, ハイデガー関連 • 2 • Tags: ケイブコンパス, ドゥルーズ, ハイデガー, 素粒子