11月 26 2008
時間と別れるための50の方法(54)
前回の続きです。
3、第3のたま 次元観察子ψ5~ψ6………垂質次元(聴覚空間?)
観測者が自分自身の身体を3軸回転させたときに、自分の前側の綜合によって形成されてくる球空間(知覚球体)と、そのとき同時に形成される背後方向側を半径とする球空間。前者がψ5で後者がψ6になる。ここで「前」は見えるが「後」は見えていないということに注意。この段階で、自己を規定する場所性が空間領域として規定されることになる。ψ5の半径に当たる部分は人間の外面なのでψ3と同様に一点で同一視されて潰されており、結果、ψ5の球空間は微小半径を持つ3次元球面(この時点ではまだ多様体ではない)となっており、この球面の自転軸(絶対的前としての視線)が数学的にはスピノールになっていると予想される。ψ6はψ5の逆側。すなわち絶対的後(下図1参照)。
ψ5の球空間はイメージしやすいでしょう。単に「わたし」の周囲に見えている球空間のことです。ただし、球空間と言っても、普段僕らが3次元空間として認識している場ではなく、奥行きの潰れによってミクロに収縮した主体自身の位置であるということに注意して下さい。この球空間の中には上図1のように無数の垂子(ψ3~ψ4=モノの図と地)が見えているのが分ります。このことは人間の個体を規定する空間が無数の主観的なモノから構成されているということを意味しています。それぞれの垂子にはモノ一つにまつわる記憶がすべて入り込んでいるわけですから、このψ5の球空間には観測者がこの地上に生まれてからのすべての記憶が詰まっているということになります。それらの記憶に時系列を与えて時間の経過として順序立てているのはψ6とψ*6を同一化させているψ8の次元です。時間とはすべての精神階層における中和の総体が生み出しているものだと考えられます。
ψ5が人間の内面側へと反転したψ6は言うまでもなく中和作用側ですから、ψ5とψ*5の相殺の結果として生み出されたものです。ψ6は自己の後側が回転して構成されている球空間のイメージになりますが、それは自己側から見た他者の前方向を半径とした球空間とも言えます(背中合わせの自己と他者)。今、あなたの目の前に他者がいて、その他者の目から発する視線がグルリと回転したときに構成されている球空間を想像してみて下さい。そのとき、おそらくあなたには他者が巨大な宇宙空間にポツンと一人点打ちされたような存在として見えていることでしょう。もし他者のそばにモノがあれば、あなたにとってはそのモノの外部に広がっている空間と、他者から広がっている空間には何の違いもないように見えているはずです。もっと言えば、それはバスケットボールの内部を膨張させた空間とも違わないはずです。しかし、少し注意して考えれば、他者から広がっているψ6の球空間にはψ*5としての他者の実存的な空間が内蔵されているのが推測できます。その意味でこのψ6は、中和された空間ではあるのですが、ψ1~ψ2領域(バスケットボールの内部)やψ3~ψ4領域(傍らのモノの外部空間)よりも一段階次元の階層が上がった空間です。僕らの認識では一見のっぺらぼうのように平板的に見える身の回りの空間は、このように多重なレイヤー構造を持って存在しているのです。
4、第4のたま 次元観察子ψ7~ψ8………球精神次元(名の発生空間?)
自分の位置を対象の中心点にイメージし、視線をその対象の奥行き方向の半径と見る。これがψ5。こうした状況で、対象の周囲に無数の他者を配置して、それら一人一人のψ5としての視線の対象への入り込みをイメージする。結果的に、対象の内部は自他の視線で埋め尽くされることになる。この視線を綜合した球空間が次元観察子ψ7と考えていい。
一方、ψ8はψ7の逆方向となる。同じく、自分の位置を対象の中心点にイメージし、そこで自分の背後方向を想像してみる。この方向性はモノの中心点からモノの外側にある肉体としての自分の顔面を突き抜け背後方向へと無限に延びていく。これがψ6。そして、ψ7のときと同様、対象の周囲に無数の他者を配置して、他者においても同じ状況を想定する。結果的にモノの内部と外部は身体の背後空間で埋め尽くされることになる。この球空間が次元観察子ψ8と考えていい。(下図2参照)
たぶん、このψ7~ψ8の描像が皆さんにとって一番厄介なものになっていることでしょう。というのも、ここで人間の意識に深く入り込んだ3次元的思考が4次元への脱出を妨害するからです。この4次元の方向性を描像するためは以前も言ったように、知覚球体自体を一本の線分と見なす必要があります。しかし、僕らが慣れ親しんでいる3次元認識では、どうしても球体が線のようには見えてこないはずです。この理由は3次元認識が世界を知覚している身体をも3次元空間の中に投げ込んでいることにあります。こうしたイメージの中では、前後、左右、上下という身体における3軸はモノの(x,y,z)軸と何ら変わるものではなくなってしまいます。この認識が4次元の通路の障害物となっているのです。
第35回目の『眉間鉛筆』のところでも書いたように、4次元方向は「わたしは動いてはいない」という感覚の内で捉えられた身体空間の中から浮上してきます。「わたしが動いているのではなく、世界の側が動いている。」そう考えることによって、「わたし」は3次元空間内へのモノとの同一化から解放され、無限遠点という3次元を超越した位置に立つことができるようになるということです。そして、その位置からは現象界のすべてがこの身体の「前」という一つの方向の中で展開しているように見えてきます。この思考様式への変更が次元観察子ψ5とψ6の球空間において「面点変換」を行うということの実質的な意味だと考えて下さい。この「面点変換」の結果として、ψ5とψ6の球空間は身体を中心とした双方向の一本の線分として認識されてくるようになります。いわゆる「絶対的前」と「絶対的後」。これが4次元の正と負の方向の実体なのです。この線分が知覚正面に対する回転軸となったものが物理数学でいうスピノールとなります。
次元観察子ψ7~ψ8の球空間は結果的にψ1~ψ2の球空間に重畳してくることになりますが、ψ1~ψ2がモノを規定する空間だったことを考えれば、この重畳がモノが陽子と中性子から構成されているように見えている理由になります。もちろん、このψ7~ψ8の生成段階では単に陽子と中性子だけですから、モノのもとになっている様々な元素を生み出すまでには至っていません。電子も足りませんしね。しかし、いずれにせよ、物質と意識が結節する創造空間の扉はこの次元観察子ψ7~ψ8の顕在化で開いたことになります。
喩えて言えば、物質とは3次元空間を張り布とするヌースの刺繍のようなものです。刺繍の針が張り布の内面と外面を幾度となく反復して様々な美しい刺繍模様を描いていくように、物質もヌースの針が3次元空間の内面と外面を何度も往復しながら、そこに結び目や綴じ目を重ね合わせていくことによって作り出されてきたものと考えてみましょう。次元観察子ψ1~ψ2とψ7~ψ8の重なりが見え出したということは、ヌースがこの反復運動の元となるもっとも基本となるルートを発見したことと同意です。本当のエルサレム(天上都市)の風景がまもなく見えてくることでしょう。位置の変換後はそこが地球人類の居住空間になっていくはずです。「そこ」に入ったもののことをヌーソロジーでは「ヒト」と呼びます。シリウスです。
海よ、汝が紅き苦悩を紺碧の希望へとかえ、
その眠りの水を天の水と地の水の二つに分け給へ。
さすれば、轟々と響く水音とともに、
失われし伝説の宝塔が、
天を引き裂かんと海底より聳え建ち上がることだろう。
――存在世界は自分自身を前と後に分離させた。前を世界の内在性と呼ぶのであれば、後は世界の外在性となる。しかし、これらは存在世界にとっては二つの場所性を示すものにすぎず、単なる場所性だけではそれらを「観る」という意識の行為は生まれない。そこに自らの存在の自覚はないのだ。存在世界が意識たるためには、観るもの(ノエシス)と観られるもの(ノエマ)という「男なるもの」と「女なるもの」における性的な力が必要となる。ここに象徴界と想像界の発露がある。外部=女はもう一つの内部=男によって〈外部-化〉され、内部=男はもう一つの外部=女によって〈内部-化〉される。互いの尻尾を噛み合う二匹の龍。こうして二つの対照的な性格を持つ人間の意識の類型である水星的なものと金星的なもの、すなわち言語と表象の生産機構が見えてくることになる。ヌーソロジーでは前者を「人間の内面の意識」、後者を「人間の外面の意識」と呼ぶ。次元観察子ψ9とψ10の世界である。――つづく
12月 1 2008
時間と別れるための50の方法(55)
●プラトン座標について………次元観察子ψ1~ψ8の骨格構造
これで次元観察子ψ1~ψ8までの描像についての解説は一応、終わります。今まで書いてきた内容がヌーソロジーでいう「トランスフォーマー型ゲシュタルト」の基礎的な知覚様式です。このゲシュタルト作りはヌーソロジーを単なる構造論に終始させないための重要な作業になります。「観察」子と名がついているように、今までご紹介してきた空間構造は人間の意識に内在と外在という二つの観念を付与するために用意された場の構造と言ってよいものです。ですから、これらの構造を単に図式的に理解してもあまり有意味なものとはなりません。というのも、「わたし」自身がこの構造そのものへと変身しなければ「観察」子にはなり得ないからです。慣れない描像に最初はかなり戸惑われるかもしれません。しかし、今までのテキストを参考にしながら根気強くトレースしていけば、ヌーソロジーが描く新しい世界観、人間観のエントランスが必ず見えてくることでしょう。
さて、これら4つの「たま」のトポロジカルな規則性についても少しだけ触れておきます。現在、ヌースソロジーではこの規則性を「プラトン座標」と名付けていますが、これは次元観察子ψ1~ψ2、ψ3〜ψ4、ψ5〜ψ6、ψ7〜ψ8が作る4つの球空間の階層性が5つのプラトン立体(正四面体・正六面体・正八面体・正12面体・正20面体)の中の正六面体と正八面体が作る外接・内接関係に起源を持っているのではないかと考えているからです。プラトン座標とはこれら次元の差異を識別するための本源的な図形群のことをいい、次元観察子を構成するための幾何学的なイデアとも言っていいものです。
まず、第一のたま「点球」としての球空間Aに内接する正八面体aを作ります。この正八面体における立体対角線(赤色で示した部分)が僕らがモノを3次元と見るときのx、y、z軸に当たります(下図1参照)。
次にこの「点球」に外接する正六面体bとこのbに外接する球空間Bを作ります(下図2参照)。
「正六面体bは正八面体aに外接する」という条件から、球空間Aをどんなに拡大しようとも球空間Bには決して到達できないことが分ります。この到達し得ない球空間B上の一点を球空間Aにとっての無限遠点として定義します。このときの球空間Bが次元観察子ψ3~ψ4としての「垂子」となります。
観察子において点球次元と垂子次元の間にどのような差異が出てくるかというと、点球を覆っている球面が垂子次元においては点に変換されてしまうということです。これが今までの解説で何度か顔を出した「面点変換」の概念です。実際の認識において、この面点変換がどのように働いているかを調べてみましょう。
まず、目の前にモノを起きます。そこにはモノの前姿、すなわち表相が見えています。表相はモノをある特定の角度から見た見え姿のことですから、これは点球の中心点Oと点球を覆う球面上の一点を結ぶ半径によって指定されているのが分ります。ここで表相方向をz方向とし、モノをグルグルと回転させてみましょう。モノの隠れていた部分が次々と表相に送り出されてきて、結果的にモノの全表相は点球におけるx、y、zの3軸のうち、x、yの2軸の回転があれば観測者はモノが持つすべての表相をその視線でなめることができます(下図3参照)。
残る3軸目の回転であるz軸まわりの回転は、単純に考えればモノの輪郭を縁取る方向の回転、つまりモノが決して背面側を見せないような回転を観測者に与えてきますが、すでにx、yの2軸の回転の中にこのz方向は含まれていますから、この第三軸回であるz軸まわりの回転はz軸まわりの回転というよりも、x、y、z軸をすべて等化するような回転となっていると考えられます。ここは少し分りにくいでしょうから、図を使って丁寧に説明してみます。
通常、第三軸目に当たるz軸まわりの回転は今いったように、観測者の方向に直立した方向を軸とする回転に見なされがちです。しかし、図3からも分るように、x軸とy軸、2軸の回転によってすでに点球の内部には3次元性の空間が出来上がっています。というのも、x軸の回転で半径部分は円板を作り、今度はy軸の回転でその円板を回転させ、球体自体が出来上がってしまうからです。この時点で球体の内部にはすでにx、y、z方向を含んでいるわけですから、第三軸であるz軸まわりの回転とは実はx、y、z方向を全く別の方向に取りまとめる回転となっているのではないかと考えられます。このことは下図4に示すように、球空間内部のx、y、z方向を観察者から見て「水」の字形に見えるような配置に置くと分りやすくなります。
観測者がこの位置から点球の回転を見ると、(x、y、z)と(-x、-y、-z)が回転によって入れ替わるのが分ります。ヌーソロジーでは、この入れ替わりを右手系と左手系の対称性が作り出されている回転と解釈します。つまり、点球の3次元性を射影平面として見なせる方向があると考えるわけです。この回転によって(x、y、z)と(-x、-y、-z)が入れ替え可能になるということは、点球が作る球空間自体の相互反転性の等化になっているということ同意です。このことは、第三軸の回転が4次元性に方向を作り出す負荷のような働きをしているということになります。この方向はちょうど物体の角運動量ベクトルのような形で点球の球面を貫き、次の垂子を覆う球面上の一点へと出てきます。ここはモノを回しても回しても微動だにしない場所、点球の球空間にとっては無限遠点とも呼んでいいような場所、つまり観測者の位置になります。人間の外面においてはそこはモノの背景面のことであり、人間の内面側ではそれは視点と呼ばれているものになります。ヌース(旋回的知性)のψ3への侵入とその反映です。
もちろん、これらの話はすべてヌーソロジーの仮説です。第三軸の回転によって4次元性と連結を持つというところは、数学的に言えばSO(3)を綜合したものが4次元の線分となるということを意味しますが、このことが実際に数学的に証明できるかどうかはよく分りません。しかし、モノと視線の間にはモノをそのまま反転させて見せるようなトリックが仕掛けてあるのは、ネッカーの立方体などでよく知られていることです(下図5参照)。
人間の視覚にどうしてこのような錯覚が起こるのかその原因はよく分っていないと言われていますが、これはヌーソロジーの観点から言えば、垂子における人間の内面と外面の分岐が反映されているものと解釈されます。
以下、ψ3~ψ4、ψ5~ψ6、ψ7~ψ8のへの拡張もすべて同じ法則性で構造化されていきますので、皆さんも、この三つの次元観察子の階層にわたっての実地検証にトライしてみるといいでしょう。観察子構成のためのいいトレーニングになると思います。参考までにその全体像を図示しておきましょう(下図6)。
何とも壮観な図です。この図から、人間の意識に表相として出現してきたヌースがスピンを多重化させていきながら、次々と次元を上昇させていく様子が想像できます。この4重の正六面体・正八面体の内接・外接構造が作り出す次元発展のトポロジカルな規則性ヌーソロジーが「プラトン座標」と呼ぶものです。ヌース(旋回的知性)の上昇の仕方がいかに単純なものであるかが分かるでしょう。点球を3軸回転させ垂子の半径に接続し、今度はその垂子の半径を3軸回転させ垂質の半径を作り、次に垂質の半径を3軸回転させて球精神の半径(スピノール)へと至る。最後はこの球精神の半径を3軸回転させて……という3軸回転の四重機構を持ってヌース(旋回的知性)は活動しているのです。皆さんも、皆さんの意識の中に内在しているこのヌースの上昇ルートを是非、追いかけてみて下さい。
――つづく
By kohsen • 時間と別れるための50の方法 • 0 • Tags: トランスフォーマー型ゲシュタルト, プラトン立体, 内面と外面, 無限遠, 表相