12月 28 2008
時間と別れるための50の方法(60)
●NCと次元観察子ψ1~ψ8
最後にヌーソロジーの原点であるNC(ヌースコンストラクション)と元止揚空間としての次元観察子ψ1~ψ8の対応関係を簡単にまとめておきます。このシリーズで次元観察子のイメージがある程度つかめてきた人には、ここでの説明がすんなりと頭の中に入ってくるのではないかと思います。
1、ψ1~ψ2(点球次元)
真ん中の小さな球体A、すなわち点球に当たります。点球とは人間の意識の方向性の対化が中和された状態を意味しています。人間の意識が生まれたときに物質概念を形作るところとして働きますが、モノを構成する球空間として表象されてくる部分という言い方が一番分かりやすいでしょう。点球は球精神の反映(付帯質)そのものです。人間の内面の意識にとっては自他相互における相互反転の差異が見えなくさせられているので、点球は単なる3次元球体としてしか把握されません。点球が作り出す観測者の視線軸に対する回転がψ3~ψ4レベルの球空間の半径(3次元ベクトル)へと接続します(下図1参照)。
2、ψ3~ψ4(垂子次元)
重なり合っているので分かりにくいかもしれませんが、真ん中の大きな球体Bの相互反転関係に当たります。一つのモノの外部性として表象されている空間の部分の相互反転性です。主体(持続)と客体(延長)の原型を作る最も基礎的な対化と言えます。ここで自他における人間の内面と外面がキアスムを形作っています。この空間は3次元座標の右手系と左手系を合わせたものに相当します。この反転関係を等化している回転が球体Bの視線軸に対する回転で、このときの回転軸がψ5とψ6の球空間の半径(それぞれヌルベクトルと時空ベクトルとして現れる)へと接続していくと考えられます(下図2参照)。
3、ψ5~ψ6(垂質次元)
左右の大きな球体CとDに当たります(球体Cと球体Dは相互反転関係にあります)。ここで次元観察子ψ3~ψ4の垂子次元である球体Bはψ5~ψ6である垂質次元においては、面点変換によって、球体C(もしくはD)上の一点と見なされていると考えるといいでしょう。当然のことながら今度は球体C(もしくはD)の視線軸に対する回転が次のψ7~ψ8レベルの半径であるスピノールへと接続していると考えられます(下図3参照)。この二つの球空間は個体における持続と延長の場そのものとなります。
4、ψ7~ψ8(球精神次元)
球体Eに当たります。図の上の表示としては、ψ3〜ψ4を意味する球体Bと同じものに見えますが、この球面上の対蹠点すべてに様々な観測者が位置しているという意味で全く次元の違う球空間なっています。この球体Eは多様体としての3次元球面S^3を形成しています。ψ5~ψ6の球空間をそのまま中心となっている無限遠点にまで縮め、その無限遠点によって形成される球面がψ7~ψ8の球空間上の球面になっていると考えれば分かり易いでしょう。結果的にこの球体をψ1~ψ2を意味した球体Aのところまで凝縮化させれば、球精神の対化としてのψ7-8が持ったカタチとなります。モノの場所性において人間の精神と付帯質が重畳している様子がはっきりと見て取れるのではないかと思います(下図4参照)。
ヌーソロジーの文脈では、変換人と呼ばれる存在はこれら次元観察子ψ1~ψ8のカタチをベースにして、それに続く以下のような観察子領域を顕在化させていくことになります。
ψ9~ψ10(思形と感性)
人間の内面の意識(象徴界)と外面の意識(想像界)
ψ11~ψ12(定質と性質)
人間の個体化を確立させていく次元(物質性と精神性の分断ならびにそれらの交接)
ψ13~ψ14(顕在化)
人間からヒトへの進化プロセス
ここでいう「顕在化」とは、これまでの人間の意識の在り方を方向づけていた無意識の構造を人間の意識自体が空間構造体として知性上に見い出していくといったような意味です。顕在化はミクロ/マクロ、内部/外部、主客、自他概念等すべての二項対立を解除する力を持っています。そして、タカヒマラという精神構造体には、この顕在化した次元観察子群が凝縮化を起こすことによって、次の次元(他者側の次元であるψ*側)の元止揚空間を形作る力となっていくような仕組みが存在しています。この遷移が正確な意味での「次元の交替化」となります。
ψ7~ψ8 ………→ ψ*1~ψ*2へ凝縮化
ψ9~ψ10 ………→ ψ*3~ψ*4へ凝縮化
ψ11~ψ12 ………→ ψ*5~ψ*6へ凝縮化
ψ13~ψ14 ………→ ψ*7~ψ*8へ凝縮化
こうして、4つの段階を通して次元観察子のψ13~ψ14までが顕在化してくることによって、これらの幾何学的概念(カタチ)が他者側の次元の元止揚構造に接続し、人間の意識はヒトの意識次元へと遷移していくことになります。つまり、ヒトの意識へ進化するということの実質的意味は他者側の元止揚空間ψ*7〜ψ*8を支える存在へと進化するという意味であり、結果的にこのことは凝縮化を考えれば自身のψ1〜ψ2の内部を支える存在となるということを意味します。つまり、人間の意識がモノ自体へと変容していくということです。約60回に渡ったこのシリーズは、特にその第一段階である次元観察子ψ7~ψ8までの顕在化、および、そのψ*1~ψ*2への凝縮化までのプロセスについて、その描像の仕方に的を絞って説明を試みてきたことになります。――つづく
12月 30 2008
時間と別れるための50の方法(61)
●無時間の中へ
人間型ゲシュタルトはつねに時間の中に根を張った思考を持っています。それは人間の意識というものがヌーソロジーがいうところの中和の場を生息地として現象化しているからです。中和における思考は全体より部分を、永遠より一瞬を、存在より存在者を、そして何より肯定より否定を先手に持つ性格を帯びています。何ものも存在しない「無」から一体いかにして「有」が生まれたのか。一瞬はどのように寄り集まって時間の流れを作るのか。個体はいかにして全一なるものと一体化できるのか。こうした問いかけは、すべて中和の名のもとの思考であり、このように「無」という否定的なものが先手を取った思考が生み出す問題はおそらく永遠に解決を見ることはありません。「無」とは存在の付帯質の異名だからです。
中和の中に身を置いた思考は思考すら時間の産物と見てしまいがちです。137億年前にビッグバンが起こり、その後宇宙は膨張を続け星々を生み、やがて太陽系が生まれ、地球が生まれ、その地球上に今度は生命が生まれた。そして、その進化の先端に人間という種が存在しており、その種の中の一つの個体としての「わたし」が、こうして今、思考を働かせている。。。このような考え方はすべて歴史(時間)が自然を作ったという人間の思い込みの下に書かれた存在のシナリオです。時間に支配されたこの中和の思考を僕らはそろそろ逆転させる時期に来ているのではないでしょうか。すなわち、歴史が自然を生んだのではなく、自然が歴史を生んだのだと誰はばかることなく英断を下すこと。
歴史の創造が自然の一部であるのならば、自然は当然のことながら歴史を消しさる能力をも具備しているということになってきます。無時間における自然。ただそこに在りてあるもの。何一つ理由を問われることもなく、ただ在りて在り続けているもの。人間の意識が自我の頑な自己同一性から解放されていくためには、歴史が去勢されたこの自然そのものを具体的にイメージすることが必要になってきます。
無時間の中の星々とはなんなのでしょう。無時間の中の地球とは。そして、無時間の中の大地や海とは。こうした疑問に答えるためには無時間の素粒子や原子の在り方を直観する眼差しが必要となります。この眼差しによって初めて思考は物質に触れ、所産的自然における受動的な綜合者から能産的自然の中の能動者へと変容を遂げていくことになるのです。
というところで、ヌーソロジーの公式サイト『ヌースアカデメイア』のコンテンツから「七の機械」に関するテキストとそのビデオクリップを紹介して、このシリーズの締めにしたいと思います。次元観察子ψ9以降の解説を目的とした次回シリーズ『4つの無意識機械(仮タイトル)』もどうぞお楽しみに。
——NC generator ver, 1.0 七の機械
“それ”は回る。“それ”は回り続けている――。
“それ”は人間が人間であるために必要とするもの――表象、言語、感情、思考、セックス、自我、国家、戦争、平和、テクノロジー、そして神――おおよそこれら諸々のものを生産し、供給し、配送し、消費するために、いまこの瞬間も、世界中のあらゆる場所で、人知れず回り続けている。
“それ”が作り出す回転の中で最小かつ最大のもの。
その謎めいた回転のことを哲学者たちは永劫回帰と呼んできた。永劫回帰において、世界は完成に導かれると同時に、その起源に立つ。
生成されるものの受容器であったものが、同時に生成されるものを創造する原動機へと変身する奇跡的な事件――。
永劫回帰としての“それ”は、ミクロとマクロ、自己と他者、過去と未来、男と女、生と死といったすべての二項対立を超克し、そのアンドロギュノス的聖域の中で、僕ら人間の営みのすべて支える実体となるべく、世界のありとあらゆる現象をジェネレートしてゆくことだろう。
NC generator、通称、七の機械。
それは“それ”が作り出す回転を私たちの居住するこの地平に出現させることを目的としてアセンブルされた理念的構築物(イデアル・アーキテクチャー)である。
By kohsen • 時間と別れるための50の方法 • 3 • Tags: NC-generator, アンドロギュノス, ビッグバン, 人間型ゲシュタルト, 付帯質, 素粒子